香川真司。Jリーグ セレッソ大阪で花開いた彼は、ドイツの古豪ボルシア・ドルトムントへ移籍。そこで華々しい結果を残した後、マンチェスター・ユナイテッドを経て、再度ドルトムントで戻り活躍を続けている。
PKを決めた後の香川真司と、決勝点を決めた大迫勇也(Photo by Carl Court / Getty images)
今回注目したのは、香川のサッカー選手としての活躍ではなく、ビジネスシーンにおける新たな側面だ。フォーブスジャパンでも以前取り上げた本田圭佑は起業家としても多くの人々に知られているが、香川は本田のそれと形は異なるものの、サッカー選手として社会に対し何ができるかを考え活動している。
2017年8月、予防領域に特化したモバイルヘルステクノロジーベンチャー「FiNC(以下、フィンク)」は、香川真司のCSRO(チーフ・ソーシャル・レスポンシビリティ・オフィサー)への就任を発表した。香川はフィンクのCSROとして、高騰する医療費の問題や世界の飢餓問題といった社会的課題に向き合い、活動を続けている。
ワールドカップ開催前の香川に、CSROを引き受けた理由から今後のビジョンまで、話を聞いた。
──香川さんは2017年、フィンクのCSRO(チーフ・ソーシャルリスポンシビリティー・オフィサー)に就任しました。何に共感し、なぜ引き受けることにしたのでしょうか?
最初は正直、フィンクという会社のこともしらなかったですし、CSROになる予定もありませんでした。知り合いの紹介で食事をさせて頂いたのがきっかけなのですが、そのとき、溝さん(溝口勇児社長)や小泉さん(小泉泰郎副社長)のお話を聞いて、新しい事を起こすエネルギーをすごく感じたんです。誰のためにどんな仕事をするか、どんな会社で何を目的として働くかなど、フィンクの考えをお聞きし、感銘を受けたことを覚えています。自分は誰のためにどんな事をし、どんな役に立てるのかなど色々な事を考えました。
僕にはプロサッカー選手として世界で活躍する夢がありますが、それ以上に、今自分に何かできる事はないだろうか、そう考え、引き受けさせていただきました。「FiNCウォーク(※1)」は、世界の子どもたちの為に活動する事ができ、そのためのアクションは誰でもできる「歩く」ことでできる面白い取り組みです。こうやって一人でも多くの人が社会貢献に参加できる環境が大切だと思いますし、今後必ず結果につながると思っています。何よりも誰かのために今アクションを起こすという点に共感しました。
※1 FiNCアプリをインストールしたスマートフォンを持って歩いた分、アフリカの子どもたちの給食として寄付されるチャリティイベントのこと
──香川さんは東日本大震災の被災地のために、チャリティー試合や子どもたちへのサッカー教室などを行っていますが、そういった社会貢献活動に取り組もうと思ったきっかけはありますか?
私は兵庫県出身なのですが、子供の時に阪神淡路大震災を経験しました。その時の影響もあると思います。当時通っていた小学校に、カズさんが訪問してきてくれたのを覚えています。当時は震災の恐怖心などありましたが、カズさんが学校の校庭に来てくれた時、それが嬉しくて嬉しくて、今でも大切な思い出です。その時から、周りとの協力の大切さや影響力の強さを感じました。
いまはプロになって、微力かもしれないですが、僕にも何か出来る事があると思っています。海外に来て、チームの活動でも病院や施設を回る機会が多く、個人としても出来ることは何かないかずっと考えていました。
僕の生まれは兵庫ですが、中学生からは東北のサッカークラブに入団したので東北で育ちました。個人的な活動を関西と東北で行う事が多く、年に必ず1回は開催させて頂いています。熊本地震のときは、現地にも伺わせていただました。小さいかもしれませんが、今自分にできることを大事にし、活動をさせて頂いています。