シネマ未来鏡


さて、この作品のもうひとつの特徴である「一人称視点」の映像について触れておこう。

この作品の地球上の映像は、普通の客観的視点で描かれる。しかし、もうひとつの地球であるエコーワールドでの映像は、危機的状況を終息させるために送り込まれた元NASAの宇宙飛行士である主人公ウィル(ダン・スティーヴンス)の一人称視点で描かれる。

複製されたもうひとつの地球上では、主人公の姿は手や足の一部しか映らない。その代わり、観賞者は主人公の視点を通して、この世界の出来事を体験することになる。スティーヴン・スピルバーグの「レディ・プレイヤー1」にも、同じような視覚効果を狙った場面が登場していたが、この作品ではさらにそれは徹底されている。

宣伝のコピーには「映像ドラマ体感型SFクライシスムービー」とあるが、主人公の置かれている状況は画面に現れるステイタス表示でも明らかにされ、まさにこのあたりはゲーム感覚。慣れない人にはやや煩わしいかもしれない。去年、「ハードコア」(2016年)という全編一人称映像で描かれた作品が日本でも公開されたが、それよりはドラマ性は感じられる。

監督のティム・スミットはこれが初めての長編作品。以前はさまざまな映画でVFX監督を担当。「What’s In The Box」というショートムービーがYouTubeで260万回以上視聴され、大きな反響を呼び、映画監督デビューにつながった。まさにいまどきの「ユーチューバー」出身というわけだ。

ちなみに、タイトルである「リディバイダー(REDIVIDER)」は、「再分割」という意味。これが映画の結末にもつながる大きな意味を持つのだが、「REDIVIDER」というスペルは、右から読んでも左から読んでも同じ意味となる「回文」であることは、監督が持つ諧謔(かいぎゃく)に富んだ洒脱なセンスも感じてしまう。

果たして、この作品が後世、映画史のなかで語られる作品となるのか。その成否は、このYouTubeが生みだした映画監督のこれからの仕事にもかかっているかもしれない。

連載 : シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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