よくある典型的な例をあげると、これからはAIの時代だと意気込んで、東大などに所属する研究者を巻き込み、自社の持つデータや技術を使って新しいAI製品を作り出した──、のはいいが、全く売れないのだがどうしたら良いのか? と、何度相談されたのかわかりません。
社内で検討しても、AIの研究者に相談しても、どこかのシンクタンクに相談しても、なぜ上手くいかないかさっぱりわからない。そこで最終的に私のもとへいらっしゃるわけですが、表に出ていないものも含めてこれだけ色んな「失敗したAI製品」を見せてもらうと、そこにはいくつかのパターンが見えてきます。そのため、最近は「今ある製品をブラッシュアップする」または「全くのゼロから製品を考え直す」ためのワークショップというのを色んな企業で行なうようになりました。
いつもほんの数時間ワークショップを行なうだけで、これまで考えもしなったような製品のアイディアが、実現可能な企画書の形で何本も生まれています。本連載はこの知見をより多くのビジネスマンに知ってもらうためのものです。
それでは、具体的に失敗のパターンをあげてみましょう。私が見てきた限り、AI製品がビジネス的に上手くいかない理由として、次のような5つが挙げられます。
(1) その製品で解決可能な「総負荷量」が世の中でごく小さいものである
(2) その製品で答えようとする問題は「同質性」が低く、あまりにケースバイケースなものである
(3) その製品がごくまれにでも誤った結果を示した場合に、どのようなリスクを誰が負うかという「責任性」の大きいものである
(4) その製品が最適解として提示してくる選択肢のうち「有効性」が高いものは、考え得る全てのみ合わせの中でごくまれなものである
(5) その製品の働きは人間が行なうこと自体が意味を持つような「感情価値」の大きいものである
本連載ではこれらを1つ1つ詳しく説明していきますが、まずはよくある、これまでに複数の会社から何度相談されたかわからないような製品アイディアを例にこの5つの観点でチェックしてみましょう。
その製品アイディアとは、電子カルテやライフログといった健康データから、いつ亡くなるか、どのような病気にかかるか、正確に予測しようというものです。