「演出面でいえば、組織の中にTEAM GENESISというライブ・クリエイティブ・チームが存在し、280万人規模のライブ全体を統括しています。リアルな場でフィードバックを受けて改善してきながらつくり上げるという現場の仕組みができているわけです。
また、LDHにはアーティスト育成機関としてのEXPG STUDIOがありますが、これは特に海外にはない発想だと思います。将来EXILEやJ Soul Brothersになりたいような子たちが集まって、レッスンをする。レッスンだけではなく、実際にライブにも出演する。そこで彼らは感動体験も得るし、もっとこうすればよかったというフィードバックも受ける。
欧米などはもっとドライで、売れそうな子たちを見つけてきて、育成というよりはプロモートをする。だからこそ海外には敏腕のエージェントなどが多くいるわけですが……。この教育機関という発想は、日本の「仁」や「情」にも通じるところがあり、生徒たちのロイヤリティも上がっていきます。LDHの仕組みはそう簡単には真似できないですが、今後の企業の形としてヒントになることはたくさんあるはずです」
日本が自己肯定感を高めるために必要なのは「場」と「語り」
今回カンヌライオンズでLDHのクリエイティビティが評価されたわけだが、果たして日本全体のクリエイティビティに希望をもたらすものなのだろうか。
2016年のAdobeの調査によると、世界で最もクリエイティブな国と都市は「日本」と「東京」だと認識されているという結果が出た。その一方で、自らのことをクリエイティブだと認識している割合は13%と、ドイツ(57%)や米国(55%)など他の国と比べて低く、世界からの認識と日本人が自らに感じるクリエイティビティには大きな差があることが判明した。
また、翌年、同企業が行った「Z世代に関する意識調査」では、日本で自らのことを創造的だと思っていると回答した生徒はわずか8%。グローバルの同世代(平均44%)に比べて著しく低い結果となっていた。日本の若い世代が自らのことを創造的だと思えず、悲観的になっている。
なぜこのようなギャップが生まれ、日本人は自身をクリエイティブだと感じられないのだろうか。
「結局、日本人は情報と場に接している絶対量が少ないんだと思います。言語の問題はありますが、英語圏で日本を賞賛している記事やコンテンツに触れていないし、直接的に賞賛される場所にも出向かない。成田空港にくる外国人にインタビューするのはみんな好きだけど、自分が外に出向いて自身のクリエイティビティを発信したり、勝負したりするということは少ない。そうやってリアルな反応を得られるところで褒められることが、自己肯定感を高めることにつながるのではないでしょうか」
また、最近では中国やアフリカなど新興勢力も見過ごせないと本田は言う。
「正直、中国にはすでに一部抜かれていますよ。中国企業や中国のクリエイターは、カンヌもしかり、どんどん外に出て発信しています。戦略的だし、熱量も違う。このままだと完全に負けるでしょうね。“クラスルーム”に行かないと始まらないといいますか、日本人は本当に外に出て行かない。以前の中国は、クリエイティビティというよりも模倣のような部分が目立っていましたが、現在のアリババやテンセントで起こっていることは、もはや日本のコピーとかの次元ではなく、すごくクリエイティブで、迫力が違う。そういう企業が外に出て発信して、各国から賞賛を受けている状況です」