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そのような状況を打開し、日本のクリエイティビティを世界に発信していくためには、何ができるのだろうか。

「今回はLDHが登壇しますが、彼らと同じくらい価値のある企業は日本にもまだまだたくさんあると思っています。枯渇しているのではなくて、外で発信しようとしていないから気づかれていないだけ。

日本に決定的に欠けているのは『語り』の部分。なぜそのような発想になったのか、という背景が語られていない。ものづくりの国だからか『見りゃわかるだろ』とか『わかる人はわかってくれる』というクラフトマンシップが強い。対して、欧米は語る口がうまいから、どういったフィロソフィーでこれを作ったのか、とか、どういう背景でこれが生まれたのか、などといったブランドヒストリーを語るのがうまい。ここで差がついているんですよね。

日本はクリエイティビティの裏にあるものを語らなすぎるので、まったくもって再現性がないように思われるし、日本のクリエイティビティに触発された外国人が学んでいく方法論がない。だから、少しでも再現性のある話とか、似たようなクリエイティブが作れるための最低条件などをきちんと言葉にして発信できるといいですよね。

たとえば、“ゆるキャラ”もすぐに「YURUI」とか「kind of loose」みたいな直訳で片付けてしまう。でも、それじゃあ海外の人は何がなんだかわかりません。3年前に私がカンヌライオンズで行ったセッションでは、「Perfectly Rejecting Perfection(PRP:完璧を完璧に否定する)」という表現でゆるキャラを説明しました。完璧になりそうなものを逆に一歩手前で止めることで、可愛らしさや奇妙さ、奇抜な感じが演出できるのだ、と。そのときやっと海外の人たちは、理解した表情を見せました」

今まで内需で満足してきてしまったからこそ、自分たちのクリエイティビティを以心伝心でわかるだろうというスタンスをもち、だからこそ説明する必要性をもたなかった日本。しかし、今後はそこを世界に向けて開示することによって、“日本をちょっと好きな人”をもっと深く引き入れられるかもしれない。

「日本のクリエイティブに関わりたいという外国人が増えるかもしれないし、アプローチや方法論を理解した人が作った海外の作品がジャパン・フィーチャリズムになっているかもしれない。映画ではすでにそういうことが起きていますが、もっと表現の裾野が広がっていく可能性はあるわけです」

海外が評価する日本の「面白さ」

そもそも、海外は日本のどのような部分にクリエイティビティを感じるのか。

「実際日本のクリエイティビティを見て“クール”と言う人もいますが、それだけだと不十分な気がしますね。僕が個人的に面白いと思った彼らの感想は“クアーキー(quirky)”という表現です。直訳すると、ちょっと奇妙な、とか、奇抜な、などといった意味になります。

以前海外からきたお客さんに「日本の一番ホットでクリエイティブな場所に行きたい」と言われて色々なところを提案してみたんですけど、結局一番喜んだのは、歌舞伎でもなく相撲でもなく、ロボットレストランでしたね。テクノロジーとか設計の部分はしっかりとしたクオリティが担保されているという暗黙知はあった上で、ちょっと奇抜なものに対して日本的な感性を感じるようなんです。そもそも“クールジャパン”という言葉自体も、ど真ん中で格好いいというよりも、少し外してたり、ちょっと変だったり、そういった面白さが含まれていると思います」



日本のモノづくりや伝統文化に対してクリエイティビティを感じているわけではないということだろうか。

「それがちょっと日本人と海外の人たちとずれているところなんですよね。エッセンスとして伝統文化が出てくるのはいいんですけど、正直、日本人が思っているほど彼らはそれを求めていない。最近もマレーシアの日本物産展 で閑古鳥が鳴いているっていうニュースがありましたけど、伝統芸能や伝統工芸を一方的に出すだけだと面白いとは思ってないでしょうね。もちろん、ものづくりに対してはリスペクトがありますけど、本当にクリエイティブだったり、格好いいなと思ったりしているのは、まさにクアーキー、ちょっと奇抜なものなんです」

海外が賞賛する日本のクリエイティビティは「クアーキー」な部分にあるという。そのギャップを認識することは、日本のクリエイティビティを海外に発信していく上で一つの武器となるかもしれない。

「確かにいまの中国の勢いはスゴいですが、日本は島国だからか、ちょっと奇妙な独自のクリエイティビティがあります。ヨーロッパの小国の人たちにはそういった感性がウケたりするんですよ。いずれにせよ2020年の東京オリンピックなどもありますし、世界が日本のクリエイティビティに向ける期待値は上がっている状況です。アメリカや中国など大陸的なアプローチではないところで、まだまだ戦っていけるとは思いますよ。

もちろん、“おもてなし”とか“伝統芸能”というのを推していくのは別にいいのですが、テクノロジードリブンは中国に一部抜かれつつあり、独自の世界観でいうと、今はまだ大丈夫ですけど何もしなければアフリカに抜かれてしまうかもしれない。そういった状況で悲観的にならないためには、場に出向き、方法論などを開示する、というのが必要なのではないでしょうか。すでに日本にクリエイティビティはあるわけですから」

文=園田菜々 写真=小田駿一

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