西アフリカの経済大国は、ナイジェリアだ。今回のワールドカップ開幕前には代表ユニフォームのデザインが注目され、あまりの人気で入手困難になった話題が盛り上がった。ナイジェリアは英語圏の国であり、他の西アフリカ諸国とはやや異なる環境。
人口は約1億9000万人と日本より多く、アフリカ大陸で最大のスタートアップエコシステムが存在するといわれており、Africa Private Equity and Venture Capital Associationのレポートによると、2017年時点ではスタートアップ調達額は南アフリカ、ケニアに次ぐ3番目の規模を誇る。ナイジェリアには、「kubi」や「Page」といったモバイル送金サービスを中心に急成長中のスタートアップが登場し、外国資本も多く入っている現状だ。
参照元:iHub公式サイト
なぜ英語圏の国だとスタートアップが盛り上がるのか、その理由は自明だろう。英語は世界共通語であり、投資家や国外企業が参入しやすく、マーケットが広がり、さらに人が増えていく正の循環が生まれる。フランス語を話せる非フランス語圏の人口は英語と比べると圧倒的に少ないため、参入障壁が高く、一方でフランス語を話す現地人が一から英語を学ぶことも現実的ではないため、英語圏の国々と比べ発展がどうしても遅くなるのである。
東アフリカ経済圏のいま
言語の壁に阻まれ、ポテンシャルはあるもののまだまだ発展途上である西アフリカと比較し、東アフリカ経済圏は急速な成長を続けている。中でも、ルワンダが特に興味深い。南アフリカ、ケニア、ナイジェリアのスタートアップ大国に続き、ガーナ、タンザニア、そしてルワンダが追い上げている構造だ。
ルワンダの人口は約1210万人とセネガルよりやや少なく、東アフリカ経済圏でも最も小さな国。そんなルワンダだが、いままさに、政府が旗振り役を担い、アフリカナンバーワンのスタートアップ大国を目指している。ルワンダが目指すのは、イスラエルやシンガポールのようなスタートアップエコシステムの形成だ。
寺久保はいま、ルワンダでの取り組みの一つとして「Tech SandBox」構想を掲げる。SandBoxとはその名の通り、特定地域において規制緩和を促進し、最先端技術の実証実験をするための「砂場」のような場所をつくること。新しいテクノロジーを実用化する際に法規制が障害になるケースは多々あるが、ルワンダは規制緩和によって、国内外の最先端テクノロジーを扱うスタートアップを呼び込み、国全体を盛り上げていこうとしているのである。
リープフロッグ型発展(※1)を遂げる現地の様子を見ていて、寺久保は「私自身は実際に経験していませんが、多分、戦後日本はこんな雰囲気だったんだろうな」と話す。かつて焼け野原だった場所から東京という大都市ができたように、アフリカはまさにいま高度成長期の真只中。英語圏の国々を中心に発展したスタートアップの波がアフリカ全土に広がり、人口25億の一大経済圏が成立する将来はそう遠くない。
※1:新興国が先進国から遅れて新しい技術に追いつく際に、通常の段階的な進化を踏むことなく、途中の段階をすべて飛び越して一気に最先端の技術に到達してしまうこと