「西洋型の食事」が生んだ複雑な問題、解決策はあるのか

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米国の消費者は毎日、1人当たり450g近い食品を廃棄しているという。持続可能性の重要性を訴える人たちにとっては、非常に残念なことだ。

米農務省(USDA)が主導した調査によれば、同国で1年間に廃棄される食品の量は、1人当たり約100~130kg。食卓に並ぶ食品は毎年、その20%以上が廃棄されている計算になる。また、これは1日に必要なカロリーのおよそ20億人分が捨てられているということでもある。

環境への負荷を減らすこと、そして人間の食生活を改善することは、世界各国の共通した関心事であるように思われる。だが、どの国の企業も、この2つの目標を同時に達成することに苦労している。

企業は対外的に示す目標やマーケティング戦略の一環として、持続可能性に関する約束を明確に打ち出しているが、調査結果によれば、それらは消費者が好む「西洋型の食事」とは相いれないものなのだ。

西洋型の食事の特徴

調査結果は、以下の点を指摘している。

「西洋型の食事の特徴として挙げられるのは、精製された炭水化物、添加された糖類や塩分、動物性食品の摂取量が多いことなどだ。また、果物や野菜、全粒穀物の摂取が少ないことでもある。こうした食習慣が世界的に広まったことが、人間の健康と環境の持続可能性に同時に課題を突き付けている」

「西洋型の食事に特徴的な要素は、世界の疾病率と死亡率に対する多大なリスク要因でもある。そして、温室効果ガスや土地利用といった主な環境負荷を増大させるものでもある」

「脱肉食」が解決策に?

この問題の解決に向けての最大のチャンスをもたらすものの一つとして、植物由来の食品の普及拡大を挙げる人たちがいる。例えば、米フードテック企業インポッシブル・フーズの創業者であるパトリック・ブラウンが起業したきっかけには、現在の穀物(トウモロコシ、大豆、小麦、米)の生産量で、2050年に予想される世界人口に必要なタンパク質を賄えることがあるという。

植物ベースの食品が占有する市場シェアは、現時点ではまだ小さいものの、消費者の人気は高まりつつある。ただ、当然ながら代替肉などのこうした食品は、規制の在り方を一層複雑なものにする。

食品に関する規則の厳格化を求める業界団体などは、一部のパッケージに記載される「牛」「肉」「牛乳」といった言葉が、消費者に混乱をきたすとの懸念を表明。北米食肉協会(NAMI)が当局に嘆願書を提出しているほか、複数の上院議員らが規制強化に向け、議会に法案を提出している。

深刻さを増す問題

驚くほどの食品廃棄量が報告されている一方で、世界では多くの人が十分な食料を入手できずにいる。国連食糧農業機関(FAO)は、慢性的な飢えに苦しむ人は約8億人に上ると推計している。

食品廃棄の問題は、その他の国だけでなく米国にも悪影響を及ぼしている。割合は小さいながら、周辺に生鮮食料品店やファーマーズマーケットがないことで、新鮮な果物や野菜、その他の健康的な食品が入手できない地域、「食の砂漠」の問題に悩まされている人たちがいるのだ。

こうした地域に住む人たちは、必ずしも摂取カロリーが不足しているわけではない。だが、必要な栄養は不足している。また、選択肢や経済的余裕の欠如から、環境に害を及ぼす食品を消費している人が多くなっている。

米国の1人当たりの食品廃棄量は1974年以降、50%近く増加している。食品廃棄物は埋め立てごみの19%を占め、そして温室効果ガスを排出している。企業や議員たち、消費者がそろって変化を起こすことを約束する前に、状況はどの程度まで悪化するのだろうか──願わくは、大幅な悪化ではあってほしくない。

編集=木内涼子

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