最終選考には米国をはじめインドやスイスの5チームが残ったが、賞金100万ドルを手にしたのはインドの24歳の起業家、Manik Mehtaが率いるウェアラブル企業「Leaf Wearables」だった。同社のデバイス「Safer Pro」は位置情報つきの緊急アラートを発信して救援を求めるほか、現場の音声を録音する機能を持つ。
「警官に賄賂を渡す行為が日常的な途上国では、録音データは重要な意味を持つ」と、今回のコンペティションを後援した「InfoSpace」共同創業者のAnu Jainは述べた。
女性の暴力被害は世界的な問題だ。WHOのデータによると、世界の女性の約3人に1人が肉体的、もしくは性的暴力の被害を受けている。InfoSpaceを創業したNaveen JainとAnu夫妻はこの問題に取り組むため、2016年にXPRIZEと共同で今回のコンペティションを立ち上げた。
そこで課題とされたのは、女性が被害に遭った場合に90秒以内に通報できる小型デバイスの開発だった。そのデバイスはインドのムンバイのような都市の混雑したバスの車内でも利用可能で、ネットにつながりにくい地方都市でも使えるものであることが求められた。さらに、安価で目立たない外見であることが条件とされた。
今回のグランプリに輝いたLeaf Wearableの創業は2015年。同社は過去にペンダント型の護身デバイスをリリースしていた。受賞につながったSafer Proは、FitBitに似た外見の3G及び4G通信に対応した緊急アラートを発信するデバイスで、途上国ではまだ当たり前に使われている2G環境下でも発信が可能だ。
Safer Proは1回の充電で3日間の使用が可能。価格は現状では35ドルを予定しているが、今後さらにコストを下げる努力を行なっていくという。
「女性の暴力被害は途上国だけの問題ではない。私たちが暮らすアメリカでも、大学のキャンパスでも被害は発生している」とNaveen Jainは述べた。
「Safer Proのようなデバイスの普及により、女性を襲おうとする犯罪者たちを思いとどまらせる効果が生めるはずだ」と彼女は話した。