6月中旬以降は、株価は年初を上回る水準にまで回復している。ただ、S&P500種株価指数の前年比およそ13%の伸び率と構成企業の配当利回りと比べた場合、テスラはいずれも大幅に下回っている。
このところのテスラの動向から、私たちは次の5つの点を学ぶことができる。
・ 企業は成長する
テスラは3月、10万台を超える「モデルS」のリコール実施を発表した。原因はパワーステアリングの不具合で、同社としては最大規模のリコールとなった。これは、自動車メーカー各社が過去に何度も直面してきた問題を、テスラも経験したということを意味する。
自動車が使用される状況をくまなく考慮した試験を行うことはできない。自動車メーカーができる唯一のことは、販売後に問題が発生する可能性はあると認識すること。そして、不具合が発見された場合には迅速に、断固とした行動を取ることだ。
・ レイオフは市場経済の現実
テスラは6月中旬、従業員の約9%に当たるおよそ3600人をリストラすると発表した。人員削減は、米国の労働市場が抱える現実だ。企業は常にこれを行っている。勤務先がテスラのようなニューエコノミーにおいて登場した企業でも、オールド・エコノミーのころからある企業でも、どちらでも同じだ。誰も、そしてどの企業も、免れるものではない。
いわゆる正社員の立場も、フリーランスで単発の仕事を請け負う立場より安全で安定しているとは言えない。
・ 悪いことは立て続けに起こる
米女優メアリー・マコーマックは6月15日、映画監督である夫のテスラ車が路上で発火したことを明らかにした──テスラは万物の恨みを買っているということだろうか?いや、全くそうではない。
企業についての良くないニュースが報じられるようになると、世界中がそれらに注目する。ただそれだけのことだ。全く別のタイミングであれば、この一件がニュースにならなかった可能性は十分にある。
・ 一直線に前進することはない
起業家が全く新しい製品やアイデアを簡単に思いつくことは、ほとんどない。本当に新しいものには常に、克服しなければならない問題が存在する。テスラの場合で言えば、最近のリコールやレイオフといった出来事が、そのことを示している。同社にとっての乗り越えるべきハードルは、今後も増えていくだろう。
・ どのような混乱もマスクを減速させることはない
テスラの共同創業者であるマスクは、生来の起業家だ。未来をどのように形作りたいかが見えている。マスクが目標の達成に焦点を絞っていることは間違いない。日々の出来事は、目標達成への過程にすぎない。
実際のところ、起業家の大半はそれと同じように物事を成し遂げる。よく言われるとおり、先見性の明のある起業家は、水平線上の岬を目印に外洋を航行する船のかじ取りをする船長のようなものだ。船縁に当たる波が大きくても、あまりそれを心配することはない──私たちにとっては、そこから学べることがある。