激安Eコマースで急成長、米「Wish」が直面する最大の課題

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ショッピングアプリの「Wish」では、このところ経営幹部の流出が続いている。この1年だけでカスタマーサポートやコンテンツマネジメント、物流、サプライチェーンマネジメントなどの幹部が退職し、創業者のPeter Szulczewskiは穴埋めに追われている。

「企業文化やオペレーションを改善する必要があることを痛感させられた」とSzulczewskiは話すが、具体策は明らかにしていない。ポーランド系カナダ人のSzulczewskiは今後、Wishを売上高1兆ドルの企業に育て、ウォルマートやアリババ、アマゾンと肩を並べるという野心を抱いている。

Wishの評価額は、昨年実施した資金調達ラウンドで85億ドル(約9360億円)に達した。売上も過去8年間で急上昇を遂げ、2017年に10億ドルを超えた。黒字化はまだだが、これまでにDST GlobalやGGV Capitalなどから調達した13億ドルの資金はまだ潤沢に残っている。

Wishのアプリはピンタレスト風のインターフェイスで、ユーザーは中国メーカーが製造した激安商品を購入することができる。サイトに登録しているマーチャントの数は100万を超え、その80%は中国の企業だ。サイトには1ドルの腕時計や8ドルのセーターなど、目を疑うような価格の商品が数多く並び、顧客の多くはフェイスブック広告経由で流入している。

これまでのところWishの戦略は大当たりをしているが、同社は急拡大による成長痛に悩まされている。Szulczewskiが恐れているのは、Wishがかつてのグルーポンのように失速することだ。

企業評価サイト「Glassdoor」のレビューを確認すると、急成長でやる気を出している従業員がいる一方で、経営陣に対する不満も少なくない。「幹部が立て続けに退職した責任は自分にある」とSzulczewskiは述べ、今後は未来に目を向けて新しい人材を雇用していくとしている。

Szulczewskiの経歴は異色だ。ポーランドで生まれ、11歳でカナダに移住した。大学は、メッセージングアプリ「Kik」の創業者テッド・リビングストンや、食料品配達サービス「Instacart」の創業者、Apoorva Mehtaが卒業したウォータールー大学に進学した。

激安Eコマースはブルーオーシャン

卒業後はグーグルでインターンとして働き、そのまま7年間在籍した。彼は「グーグルはデータに基づく能力主義だった」と述べ、自身もデータドリブンになったことが起業する上で役に立ったという。

Szulczewskiと共同創業者のDanny ZhangはWishを立ち上げて間もない頃、顧客データを分析してブランド品よりも格安品の方がよく売れることに気が付いた。Wishで最初に売れた商品は、ノーブランドのスモア(アメリカやカナダで人気のおやつ)だったという。

他の起業家であれば顧客に高利益商品を勧めるかもしれないが、2人はそうは考えなかった。「我々の顧客は価値志向が高く、ノーブランドで低価格な商品を好むことが明らかだった。激安Eコマースを目指す競合は少なく、巨大なビジネスチャンスが潜んでいると感じた」とSzulczewskiは話す。

今後Wishが黒字化を達成して上場を目指す上では、企業文化を改善し優秀な人材を獲得する必要があるとSzulczewskiは考えている。シリコンバレーはエンジニア人材が豊富だが、エンジニア以外の優秀な人材を雇用することが最大のチャレンジだと彼は話した。

編集=上田裕資

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