「隕石の衝突から数年後にはクレーターに生物がいた証拠が見つかった。これは驚くべき速さだ」と、テキサス大学オースティン校地球物理学研究所(UTIG)のChris Loweryが声明で述べた。
今回発見されたのは小さなエビか芋虫のような生物が作った巣穴などの痕跡で、衝突後2~3年の時期に出来たものだという。その3万年後には地表水や海底に植物プランクトンが繁殖し、大小さまざまな生き物による多様性あふれる生態系を支えていた。一方で地球の反対側ではこのレベルまで回復するのに30万年かかった地域もある。
クレーターには衝突によって発生した有害物質が存在するため、生物が存在できる環境になるには長い時間がかかると見られていた。
しかし、今回の研究結果は、恐竜を死滅させるほどの隕石の衝突から世界が回復した際、最も影響したのが地域特有の因子であることを示唆している。現在、気候変動などの影響を受けている地域にとっても何らかのヒントになる可能性がある。
研究では、国際深海科学掘削計画と国際陸上科学掘削計画が共同で行った掘削で発見された藻やプランクトンなどの微化石や動物の巣穴の跡を調査した。
「微化石によって何が起きていたのかの全体像が分かる」とLoweryは述べる。「1つの岩石から数千の微化石を取り出せる。それにより生物の個体数の変化を高い精度で把握できる」。
学術誌「ネイチャー」に発表された今回の論文で、研究チームは130メートル以上にも及ぶ堆積物を調査し、時期を特定した。隕石衝突による堆積物は通常、ミリメートル単位でしか存在していなかった。
「一般的には、コア(採取された柱状試料)の中に化石などが混じってしまっているため時期の詳細な分析は困難だが、今回のコアには層がみられる」と論文の共著者でペンシルバニア州立大学の微古生物学教授のTimothy Bralowerは述べた。
「そのため年単位、月単位、週単位、日単位での変化を分析することができる」。