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2018.06.21

資産化するマンション、廃墟化するマンション

Steve Rosset / shutterstock


2012年3月の第7期臨時総会では、竣工以来初の規約改正案を成立させた。その中には「区分所有者は賃借人等関係者と一体となって規則等を遵守する義務を負う」や「監事は外部の有識者に委任出来る」等が盛り込まれた。以降、企業の監査役経験者が監事を務め、理事の執行状況の監査のみならず理事の選定委員会的な役割も果たしている。

他にも「ボードルームの設置」「バルコニーを含む敷地内全面禁煙」「共用部の無線LAN整備」「白金タワーの商標権取得」「トヨタ普通AA株取得」「消防・防災の指示命令系統の一本化」「外国人区分所有者の国内連絡先明記義務化」など矢継ぎ早に規約規則改正を行ってきた。

また民泊と言う言葉が出てこない2013年度から、外部監事の勧告でいち早く民泊の規約改正、さらに管理会社によるホームページ監視、早期発見と近隣連携など行っている。

2015年6月には2035年ビジョンを設定し、長期修繕計画を立案、それに基づいて修繕積立金を平準化し、専有面積平米あたり月額360円に改訂し、一方で執行時の仕様見直し等で徹底した修繕費削減を実現している。

翌年4月には管理組合を法人にし、それまでの全体管理組合、住宅部会、店舗部会という2階建ての構成を統合。理事も9名、監事は3名体制と竣工時の半分のスリム化を達成している。

一人暮らしの高齢者問題にも

災害時の電源確保に対する取り組みも先進的だ。

「現在のA重油による自家発電機は定期的に石油を入れ替えなければならないし、実際に半日も稼働が出来ないことが予想される。一方、白金タワーは平置き駐車場が約270台もあり、いずれそれがEV対応となっていく。だからEVを非常用電源に活用する時代が必ず来る」と予想。刑部真弘教授(東京海洋大学)に助言を求め、EV車に搭載されたリチウムイオン電池を高層エレベーターの運転などに活用するための実証実験を行い、年内の実用化を目指す。

一人暮らしの高齢者問題にも既に取り組んでいる。居住者アンケート結果によると、65歳以上の高齢者の92%が永住志向を持っている。

そこで、一人暮らしの高齢者が介護が必要になっても、施設に入居しなくとも在宅介護が可能になるような体制を管理組合主導で構築することを目指している。それにより、白金タワーの資産価値をさらに高める目的だ。港区の地域包括支援センターや社会福祉協議会、高輪警察署等と連携しつつ「白金タワー包括ケアシステム」の取り組みを進めている。

管理会社による鍵の預かりサービスや入居者の安否確認」日々の声かけ、軽微な居室内のサービスも既に行っている。また今年度の事業計画には「訪問看護ステーションの誘致」が盛り込まれ、中高年の健康診断や相談、健康体操の実践などを計画している。

厚生労働省などの行政機関は、施設数の不足や効率化の観点から在宅介護を推進しており、「地域包括ケアシステム」の構築に力を入れている。だがこの仕組みは戸建て住宅の集合としての市区町村を想定したもの。白金タワーはこの地域包括ケアシステムを、581戸で24時間管理体制が整う大規模タワーといった特性を活かす取り組みだ。
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文=長嶋修

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