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2018.06.19

グーグルが狙う「中国市場、再参入」 5億ドル出資で見えた思惑

Google CEO Sundar Pichai(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

グーグルのサービスのほとんどは中国では利用できない。しかし、グーグルは中国のEコマース大手「JD.com(京東)」と戦略的パートナーシップを結び、同社に5億5000万ドル(約608億円)を出資しようとしている。

提携を通じ、グーグル側は中国市場を、JD側は米国市場を開拓したい思惑がある。両社は共同声明で「グーグルとJDは多様な戦略を共有し、東南アジアや米国、ヨーロッパなどの地域で共同事業を展開する」と述べた。

「JDが持つサプライチェーンやロジスティクスの知見と、グーグルの技術力を結集することで、次世代の小売のインフラを構築し、顧客にパーソナライズされたスムーズな買いもの体験をもたらしていく」と声明は続いた。

中国アリババの最大のライバルであるJDは、中国のビリオネアとして知られるリチャード・リウが運営する企業。JDは今後、グーグルが運営する「グーグルショッピング」を通じ、販路を世界に広げていくという。

JDの戦略担当のJianwen Liaoは「グーグルとの提携で、優れたショッピング体験を世界の消費者にもたらす機会が開かれた。JDにとってこの取り組みは、新たな歴史の第一歩になる」と述べた。

家電製品のEコマースから事業を開始したJDは、近年はファッションやラグジュアリーアイテムの販売に注力している。JDは中国のテンセントの出資を受けており、テンセントはJDの株式を保有している。今回の声明ではグーグルとJD、テンセントの3社の取り組みには言及されていない。

グーグルは今回の出資においてJDが新たに発行するクラスA株、2710万株を一株あたり20.29ドルで取得する。

米ナスダック市場に上場するJDの時価総額は620億ドル(約6.9兆円)を突破している。JDはタイやインドネシアへの進出を進めており、現地でもアリババとの競争が激化している。

グーグルは今年1月、インドネシアの配車アプリ「Go-Jek」への出資を明らかにしたが、JDもGo-Jekに出資を行なっている。

グーグルは2006年に中国市場に参入したが、2010年に政府のネット検閲の厳しさを理由に中国から撤退していた。しかし、グーグルは昨年12月に北京に人工知能(AI)のR&D拠点を開設。グーグルCEOのサンダー・ピチャイは、浙江省で開催された中国政府主催のカンファレンス「World Internet Conference」に登壇し、「今後は中国の企業の海外進出を支援していきたい」と述べていた。

グーグルは2017年6月、EUから「自社サイトで『グーグルショッピング』を優先表示し、競合サイトを不利にした」と判定され、28億ドル(約3000億円)の制裁金の支払いを命じられていた。

編集=上田裕資

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