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パリに到着した私は、ワイナリーまで3時間車を走らせた。最後の曲がり角まで来ると、道路が封鎖されていた。ここまで来ると笑えてきそうだが、現実では笑っていられない。GPSを再度動かし、迂回(うかい)経路を示してくれることを祈った。ダメならここで車を止め、残りは歩こうと心に決めた。ここまで来たのだ。あと数キロ、どうってことはない。

幸いなことにGPSは運命とそのいたずらなユーモアセンスに打ち勝ち、私はついにワイナリーに着いた。



オベールは温かく迎えてくれた。彼は混乱した私とは対照的に冷静で、忍耐力と落ち着きを光のように放っていた。これこそまさしく人生をかけ、我慢強く完璧さを追い求めてきた人物だ。注意深く慎重で、急ぐことがない。

私たちは少し会話してから、試飲のため地下室に向かった。扉の鍵を開けようと手を伸ばした彼は「成功には、良いことも悪いことも付いてきた」と話す。例えば、地下室の扉には本格的なセキュリティーが装備されている。「保険会社からの要件の一つだ」と話すオベールの顔には、いら立ちの色がちらついた。扉が開くと、石造りの急な階段が暗闇へと続いていた。

地下室は、信じられないほどの黒カビで覆われていた。修道士が地下室を手入れしていた中世の時代を思わせるようなカビだ。オベールはあたりを見回し「ブルゴーニュは氷山のようなもの。水面下にあるものは見えない。ブルゴーニュでは、地上の家の数より地下室の数の方が多い」と語った。

ブルゴーニュ地方のクリマを世界遺産に登録する活動を主導したことついて聞くと、オベールは「他の何人かと一緒に出したアイデアだった」と語った。

「浮き沈みのある9年間だったが、ブルゴーニュが特別な理由について本当に深く考え、クリマの考え方を定義することができた。私にとって最も大切だったのは、地元の人が自分たちの持つもののがいかに貴重で、長い歴史を持つ重要なものであるかに気づいたことだ」

ここで、私は最大の疑問をぶつけた。ブルゴーニュはなぜこれほど特別なのか? ブルゴーニュ産ワインを、人々が執着とさえ言えるほどの情熱を持って求めている理由は何なのか? オベールはうなずき、しばらく考えたのちこう答えた。

「その質問には答えられると思う。ブルゴーニュには昔から、ワインを作るための厳しい自然条件と、素晴らしいワインを作るため、あらゆるスキルとノウハウを使って土地の『訳者』になろうとする人々の意思がある。これらは全て、中世のブルゴーニュで修道士の下で生まれた。土地の性質を反映したワイン作りの考え方は、ブルゴーニュが決して忘れたことのないもの」

編集=遠藤宗生

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