標高世界一のポップアップレストラン 食事前に登山8日間

Daniel Prudek / Shutterstock.com


最大の懸念はもちろん、標高だ。安全面では、顧客輸送のためのヘリコプターと救急医療隊員を用意している。ツアーに参加するかどうかを最終的に決めるのはゲスト本人だ。レストランからは次の3つの選択肢が用意されている。

一つはベースキャンプへの往復をヘリコプターで移動する4日間の旅、2つ目は行きをトレッキング、帰りをヘリコプターで移動する9日間の旅、3つ目は目的地であるレストランの標高に慣れるよう、ナムチェまでトレッキングをしてからベースキャンプまでヘリコプターで移動する7日間の旅だ。

標高によるもう一つの問題は、味覚が鈍ること。さまざまな調味料に強い関心を持ち研究してきたタクルにとっては、世界のスパイスの認知度を上げるまたとない機会だ。「機内シェフとして、標高の高い場所で食事をする際にうまく味を出す唯一の方法は“うまみ”だと学んだ。そのため当然、全ての料理においてうまみが重要な焦点となる」とタクル。

エベレスト山を選んだのは、タクルにとって個人的な決断だ。ヒマラヤのインド側、シムラ出身の彼にとって、レストランの設置は自分の生い立ちに対して敬意を表すことでもある。

こうした背景があったために、業界の著名人らが関心を示したにもかかわらず、タクルは自然への強い誇りと尊重の気持ちを持つチームを作ることを重視した。自己宣伝ばかり気にするスポンサーや業界の有力者なしで、「商業的な食事体験」ではない体験を提供する──。タクルは、レストラン立ち上げは「困難な道のり」だったと述べた。

それでも、一般市民のための「この素晴らしいプロジェクト」を生み出すというアイデアは、間違いなく闘う価値のあるものだとタクルは語った。

編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事