目当てのレストランを利用するため、何カ月も待つ人や、貯金を使い果たしたりする人がいるが、サンスクリット語で「有機自然」を意味する「ティヤギョニ(Tiyagyoni)」と命名されたこのレストランで食事するには、エベレスト山を最大8日間登らなければならない。
同店は海抜5330メートル以上の場所に設置された、世界で最も標高の高いポップアップレストランだ。ここでの食事代は、航空券と宿泊費を含む5600ドル(約62万円)で、食事客にはギネス世界記録参加証明書が与えられる。
エベレスト山に建てられたポップアップレストランは、これが初めてではない。デンマーク・コペンハーゲンの一流レストラン、ノーマ(Noma)の元シェフ、ジェームズ・シャーマンは2016年、これを既に達成している。
だが、ティヤギョニを設立し、そこでシェフとして働くサンジャイ・タクルは、ただ「世界一」の名を取るためにこのレストランを作ったわけではない。エティハド航空の元機内シェフであるタクルがこのレストランを始めた目的は、持続可能な方法で、ヒマラヤの自然への意識を高めることだ。
同レストランには木製の家具が配置され、電力はほぼ太陽発電でまかなわれている。また、風の強いエベレストの環境に対応するため、店はテントの中に作られている。タクルにとって重要なのは、「来たときよりきれいとは言わないまでも、全てを元のまま残すこと」だ。
タクルは、7つのコース料理の詳細を明かしていない。食事客の感動を台無しにしないように、また今後予定されているレストランのドキュメンタリー番組で明かすためだ。
同店舗で働くシェフは、タクル以外に、旅行会社マヒンドラ・ホリデーズ・アンド・リゾーツ・インディアの企業幹部シェフ、ソウンダララジャン・パラニアッパンと、ネパールシェフ協会から選ばれた2人のシェフで、4人それぞれが異なる個性を発揮している。
4人が担当するのは調理だけでない。10人のゲストを率い、ネパールのルクラ(海抜約3050メートル)からエベレストのベースキャンプまで、1週間ほどのトレッキングの旅で案内役を務める。厳しいことで有名なエベレスト山の環境を考えると、タクルのチームはさまざまなことに取り組まなければならない。