この動きに便乗しようとしているのが、米バーモント州だ。同州は、遠隔勤務に焦点を当てた巧妙なキャンペーンを展開し、州外からの移住を奨励している。
同州ではフィル・スコット州知事が承認した新法により、「遠隔勤務者補助金プログラム」が開始される。2019年にバーモント州に移住する100人に、1人当たり最高1万ドル(約110万円)を支給する制度だ。
応募資格があるのは、州外の企業に勤務するフルタイム社員だ。補助金により、引越しの費用やコワーキングスペースの会費などがまかなわれる。応募者は、2019年の間に同州に完全に移住しなければならない。
こうした革新的な制度による住民誘致の試みは、バーモント州が初めてではない。ニュージーランドの首都ウェリントンは昨年、世界中のテック系労働者に移住を促すべく、「ルックシー・ウェリントン(LookSee Wellington)」と呼ばれる取り組みを始めた。
バーモント州の新法を立案したバージニア・ライオンズ上院議員は、同州に住みながら遠隔勤務をする娘の夫からそのアイデアを得た。ライオンズは人事管理ソフトウエア企業ゼネフィッツのブログ記事で、「私がこの法案で目標にしていたことは2つある。コンピューターに精通した若者に州内にとどまり遠隔勤務をしてもらうことと、新たな人を州に呼び込むことだ」と語っている。
バーモント州の人口は昨年、4年ぶりに増加。近年の調査によると州外からの移住者数は国内最多となっている。また、成人10万人当たりのスタートアップ数は390社で、起業家が集まる州ランキングでは国内8位につけている。
コワーキング分野も成長中だ。州内には、地元の革新的なスタートアップを支援し、特に女性起業家支援に注力する「新興技術のためのバーモントセンター(VCET)」などのしゃれたコワーキングスペースが存在する。
しかし、それでも十分ではない、というのがスコット州知事の姿勢だ。知事は発表で「バーモント州の労働人口は、2009年から1万6000人ほど減っている。私の任期中の優先事項の一つは、労働人口の拡大だ」と表明。「私たちは既成概念にとらわれず、バーモント州民の労働力参加を促して、労働者家族や若いプロフェッショナルの移住を奨励しなればならない」と述べた。
同州の取り組みは、まさに既成概念にとらわれないものだ。同州は遠隔勤務者への補償金のほかにも、「ステイ・トゥ・ステイ」と呼ばれる"お試し"プログラムを実施。求職者を同州に招き、求人中の企業や他の若手従業員と面談する機会を設けるもので、参加者は完全移住する前にバーモント州内を下見できる。