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2018.06.17

23歳のLiDAR企業「ルミナー」がボルボと提携、トヨタに次ぎ2社目

1000SHADES / sutterstock.com

23歳のオースティン・ラッセルが立ち上げたLiDARメーカー、「Luminar Technologies(以下、ルミナー)」が、スウェーデンの「ボルボ」に同社のプロダクトを納品することが明らかになった。

ルミナーは同社のLiDARやカメラに加え、自動運転に必要なAI(人工知能)ソフトウェアを組み合わせたプロダクトをボルボに提供する。ラッセルによると、ボルボは投資部門の「Volvo Cars Tech Fund」経由でルミナーに出資を行なうという。金額は明かされていない。

まだ高校生だった2012年にルミナーを立ち上げたラッセルは、フォーブスの取材に次のように述べた。「今回のパートナーシップによりボルボは同社の自動運転テクノロジーのコア部分で、ルミナーのLiDARセンサーを活用することになる。我々は自動運転の実現にむけて、他社よりも早く安全基準を満たすテクノロジーを開発し、人間を超える知覚レベルをもたらそうとしている」

自動運転の分野ではアルファベット傘下のウェイモに加え、GMなどの大手自動車メーカーらがテクノロジー開発で先を争っている。カメラとレーダ―を組み合わせた働きをするLiDARは、自動運転には不可欠のセンサーとなっている。LiDARは昼夜を問わずあらゆる物体を3D画像で検知し、人間の視覚よりも優れている。

ボルボのVolvo Cars Tech FundのCEOを務めるZaki Fasihuddinは声明で「ルミナーは我が社が新たな技術開発を進めるにあたり、理想的なパートナーだ。先進的なテクノロジー開発の最前線に立つ若い企業を支援することで、業界における主導的ポジションをさらに高めていきたい」と述べた。

ルミナーは昨年、初の資金調達ラウンドで3600万ドル(約39億円)を調達し、ステルスモードから浮上。LiDAR分野で先行する大手「ベロダイン」を追撃しようとしている。ラッセルによるとルミナーのプロダクトは夜間の画像認識にも優れ、ハイウェーを走行中の車両に250メートル先までを認識させる能力を持つ。ラッセルは同社のプロダクトの価格に関しては明らかにしていない。

LiDAR市場ではベロダインが長年独占的なシェアを獲得してきたが、近年は「Quanergy」や「LeddarTech」「Ouster」「Innoviz」「TetraVue」「AEye」といった新興メーカーが現れている。しかし、ベロダインは数千ドルから7万ドル以上といった幅広い価格帯の製品をそろえ、生産可能台数においても他メーカーを大きく引き離している。

大手「ベロダイン」を追撃

一方でルミナーの生産可能台数は、年内に1四半期あたり5000台の達成が見込まれるが、ベロダインよりも大幅に少ない。しかし、ラッセルによるとこの台数は「世界で稼働中の全ての自動運転のテスト車両に搭載させるには、十分な数だ」という。

世界で実施中の自動車のテスト走行の多くは、都市部における低スピードの実験や車両の少ない郊外でのテストとなっている。しかし、ボルボの目標は「ハイウェーなどの高速走行に耐えうる完成度の自動運転の実現」だという。「ルミナーのLiDARは、他社製品に先がけ、ハイウェーでの走行に必要な精度と安全性を実現する」とラッセルは話した。

ルミナーは2017年にトヨタがシリコンバレーに設置した「Toyota Research Institute」とパートナーシップを結び研究開発を進めている。ボルボとの提携はトヨタに次ぐ2社目の大手との取り組みになる。この他に2社の自動車メーカーとの取り組みも進んでいるが、社名は明かせないとラッセルは述べた。

年内にアリゾナ州フェニックスでロボットタクシーの商用サービスを始動するウェイモは、独自のLiDARセンサーを開発している。ウェイモはウーバーとの間で起きた、LiDAR技術の盗用問題の法廷闘争にようやく決着をつけ、新たな一歩を踏み出そうとしている。

編集=上田裕資

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