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世の中のニーズに気づき、これまでにないソリューションを生み出すスタートアップ。企業によるスタートアップ支援プログラムは増えているが、その中でも独自のスタイルを確立し支持されているのがマイクロソフトの支援プログラム「Microsoft for Startups」だ。ここにアイデアと情熱が生み出したサービスと、マイクロソフトの共創の成果を紹介する。


幼いわが子との外出で気づいた「絶対解決したい」問題

自分たちのアイデアと技術で目の前の課題を解決し、多くの人々に楽しい時間を過ごしてもらおう。そんな熱い思いを燃料に、勢いを加速させているスタートアップがある。IoTとAIを活用した「空席情報表示サービス」を提供する株式会社VACANだ。社名のVACANは英語で「空席の~」を意味する“Vacant”に由来しており、同社の事業をそのまま表している。

同社が提供している空席サービスは2種類ある。飲食店などの空席情報のプラットフォーム「VACAN(以下、バカン)」と、トイレの空席情報を提供するクラウド型IoTサービス「Throne(以下、スローン)」だ。2016年6月の法人設立から2年の間にさまざまな企業と実証実験を行い、すでに正式運用も始まっている。

さまざまな分野の企業から注目されるバカンやスローンは、VACAN代表取締役の河野剛進の個人的な体験と思いから生まれたものだという。

「4年前に子供が生まれまして、子供連れで商業施設に行くようになりました。しかし、お昼時はどの飲食店も行列で、お店を探し回っているうちに子供が疲れて泣いてしまうことが多かったのです。多くの親御さんが体験するこの問題を、我が身で痛感しました」

空席を探して何軒もお店を回ったり、空いているトイレを探してフロアを行ったりきたり。この無駄をなくせないだろうか。そんな課題意識が河野に芽生えたという。

「どの店に空席があるのか、どのトイレが空いているのか、リアルタイムの状況がわかれば、やりたいことや楽しいことに時間とエネルギーを使うことができます。すると、子連れの外出でも、いい体験として終えることができるはずだと思ったのです」

そして生まれたのが、「1秒で空席がわかる優しい社会を実現する」バカンやスローンだ。その最大の強みは「リアルタイムの情報がわかること」にある。


「バカン」利用イメージ。商業施設の店舗の状況がサイネージに表示されリアルタイムで混雑が分かる

「これまでもインターネット上で利用できる予約サービスはありましたが、リアルタイムの空席状況まではわかりませんでした。顧客は複数店舗のリアルタイムの状況を知って効率良く動きたい。トイレも、別のフロアの空席状況がわかれば、移動しようと行動できますし」

IoTとAIを活用して、複数店舗の空席情報をリアルタイムで提供し、表示する。複数のフロアに飲食店が散らばっている商業施設に空席情報プラットフォーム「バカン」を導入する場合を例に見てみよう。

まずは、各店舗に2cm×5cmほどの大きさのセンサーをいくつか取り付ける(記事冒頭写真で河野が持つ小さな機器)もしくは、カメラをとりつける。センサーやカメラの情報がクラウドに送られると、クラウド上のAIは情報を解析し、混み具合を判断する。そして、空席情報として商業施設内のデジタル・サイネージやスマホアプリに表示されるのだ。

バカンの大きな特徴として、センサーやカメラを設置する店舗側がオペレーションをする必要がないという点があげられる。これまでの予約サイトなどでは、スタッフの誰かが予約をチェックし、返信するといった人的作業があった。その手間が負担となり、システム導入の障壁となることもある。しかし、バカンでは情報収集も解析もIoTとAIが自動で行うため、導入店舗に負担をかけずに済むのだ。

横浜駅の相鉄ジョイナスや高島屋などでは、すでに実証実験を経て正式に導入されており、JR東日本のみどりの窓口でも実証実験段階だという。

「無駄をなくす」サービスですでに世界を目指す

大きな可能性を秘めた新しいサービスを生み出したVACAN。この会社を設立まもない時期から支えているのが、マイクロソフトのスタートアップ支援プログラムだ。

「マイクロソフトさんの技術環境支援プログラム『Microsoft BizSpark』(現:Microsoft for Startups)のことは知っていたので、会社を設立した2ヵ月後にこちらから支援をお願いしました。Microsoft Azureの無償利用枠を頂き、現在もMicrosoft Azureを利用しています。これがなかったら、弊社のサービスは実現できませんでした」

Microsoft Azureが不可欠な理由。それは、セキュリティの水準の高さにある。「我々も自信を持ってクライアントに『最高水準のセキュリティです』とお伝えできますし、クライアントさんも『Microsoft Azureを使用しているなら大丈夫だろう』と信頼してくださるんです」



そしてマイクロソフトの支援は、Microsoft Azureの無償利用枠の提供だけに留まらないという。

「マイクロソフトの著名なエンジニアの方が気軽にいろいろなことを教えてくれたのがありがたかったですね。PR支援も熱心に行っていただき、ビジネスサイドの方も『何か困ったことはないか?』と声をかけてくれます。これほど手厚いスタートアップ支援プログラムは他にないでしょうね。最近、マイクロソフトさんが手がけるプロジェクトにも、声をかけていただきました。企業同士の信頼関係が必要なB to Bの分野では、弊社の力だけで世の中にいち早くサービスを届けようとしても限界があります。だからこそ、パートナーの力を借りることがとても大切なのです」


●日本マイクロソフトの発想の源
パートナーとしてバカンに支援を惜しまない理由を、日本マイクロソフトのコマーシャルソフトウェアエンジニアリング本部の窪田正史はこう説明する。
「今、AIが注目されていますが、AIで出来ることを理解し、効果的にAIを使いこなす事が難しいのも事実です。AIをどのように使うべきか分からない企業も多いと思います。だからこそ、ニーズがあるサービスを販売可能なソリューションとして完成させているVACANさんはユニークな存在だと考えています。そのVACANさんとのパートナーシップにより「マイクロソフトに相談すると何か面白い事ができる」と考えて貰えるようになるのかなと思います」
 同社が提供するバカンやスローンが国に依存しないサービスであることも非常に魅力だという。
「弊社の強みはグローバルであること。VACANさんが海外展開をする際、グローバルでお客様を紹介することが可能な仕組みがあります。また、弊社はBtoB分野に強いので、国内外を問わず、一緒にビジネス拡大を行っていけたらと思っています。また、Microsoft Azureに次々と追加される新機能を取り入れ、サービス化している点もバカンさんの特徴です。今後も、マイクロソフトの最新のテクノロジーをVACANさんにご利用頂き、その導入支援も行っていきたいです」


無二のサービスは、すでに世界を視野に

現時点で、トイレの空席情報サービスは複数社の競合が存在するが、レストランの空席情報検索アプリケーションは、世界的にも競合が見当たらないという。しかも、空席情報をリアルタイムで提供するという本来の目的以外にも、さまざまな可能性を秘めている。

「リアルタイムの空席情報に紐づいたデータは、待ち時間のデータやクーポン発行時の効果測定、顧客満足度の向上などにも使えるはず。また、一つの店舗のどの席がどう使われているか、人が入りやすい配置の解析などにも活用できるでしょう。弊社のサービスはどんどん変化していきますし、開発中のものもあります。センサーの改良やコスト削減、安定性の追及など課題は山積みですし、グローバル展開のための多言語対応やニーズの発掘も必要です。今後もマイクロソフトさんの力をお借りして、課題を解決していきたいですね」

生活者としての切実な課題意識と、「優しい社会に」という思いから生まれた空席情報検索アプリケーション。「無駄をなくすことで、よりよい時間を過ごしてほしい」という思いは、国境を越えていく。


連載「The New "Partner Business" ─日本マイクロソフト─」
それは日本マイクロソフトのイメージを変えるインパクトがある。今までに無かったパートナービジネスの登場だ。
日本のスタートアップを支え、共に成長する新業態はなぜ支持されるのか。
4回の連載、そしてスタートアップたちの生の声を通じて、その全貌を明らかにしていく。


Promoted by Microsoft text by Kei Yoshida | photographs by Setsuko Nishikawa

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