こうした時代において、必要なのは課題解決思考ではなく、「デザイン思考」だ。ヒューマン・セントリック・デザイン(人間中心的)とも呼ばれており、ユーザーインタビューなどを通して開発を進め、フィードバックをもとに微調整を繰り返すことでサービスの完成度を高めていく。机の上で考えているだけでは、ユーザーは求めているものは分からない。
そんなデザイン思考の重要性を訴えているのが、Onedot CCO(チーフ・クリエイティブオフィサー)の坪田朋だ。坪田はライブドア、DeNAのデザイン戦略室を立ち上げ後、ボストン・コンサルティング・グループのBCG Digital Venturesへ。
そして2017年、ユニ・チャームとの共同出資で立ち上げた育児動画メディア『Babily』を展開するOnedotのCCOに就任した。クリエイティブの側面から経営課題の解決をサポートしている。
なぜ、坪田はCCOに就任したのか。また、ビジネスにデザインの力が求められる時代をサバイブするにはどうすべきなのか。彼の言葉から見えてきたのは、組織におけるCCOの重要性だった。
ロジカルからデザインへ、変わりつつある事業開発の手法
━━海外では耳にすることが多いですが、日本ではまだ馴染みのない役職だと思います。CCOとは、何をする仕事なのでしょうか?
簡単にいえば、ユーザーニーズをチームにインストールしながらサービスづくりを統率する役割です。経営者のビジョンを具現化するのがミッションとして、経営者の考える山の登り方がユーザーニーズと食い違う事も多いので、そのギャップを埋めてゴールに向かうモノづくりを実現していくのがCCOとしての主な仕事です。
仕事の内容を具体的に挙げると、主に3つあります。
まず、ユーザーと対話し続けてニーズを理解する。2つ目にそのニーズをサービスに変換する。そして最後に、出来上がったサービスがユーザー目線で面白いのかどうかの評価をユーザー判断してもらう事です。
━━なぜいま、ユーザーエクスペリエンスを意識したサービスづくりが求められるようになってきたのでしょうか。
「デザイン思考」が求められるようになった背景として、仮説を立てて論理的に考え抜いた企画でも開発中に市場の状況が大きく変わってる事もあり、一撃必殺で作り込んだサービスをリリースする際にはその仮説が既に解決されているなどニーズがズレてしまう事もあります。
そこで重視されるようになったのが、不確実性を素早く実行し、それを解消して評価する。このサイクルを素早くどんどん回していく、ということ。僕がやっているのは、まさにこれです。
経営者に対してもユーザーに対しても、開発をお願いするチームメンバーに対しても同じスタンスで、なぜこれをつくりたいのかを伝えて、すぐさま開発に移る。そして開発を進めていく中で不確実なコトをクリアにして次の実行プランを考えるようにしています。