ビジネス

2018.06.15

なぜ、デザイナーが経営に関わるべきなのか?

Onedot株式会社 CCO/Basecamp CEO 坪田朋




━━とにかく仮説検証を繰り返して、ユーザーと企業側の食い違いをなくす、と。

そうです。ただ、最近はこのサイクルがさらに早回しになっています。これまでは出来上がった商品の感想をユーザーに聞いて、次の開発に生かす。こういったパターンがほとんどでしたが、いまは「将来こういう製品を開発します!」とティザーサイトで検証するほか、コミュニティを作って対象ユーザーに発信しながら作るようになってきています。

その際、大切になるのは、なぜこのサービスを開発しているのかをきちんと宣言すること。宣言することで早い段階からユーザーの意見が聞けますし、「待っていました!」などの生の反応を得ることもできる。こうした声が入ってくると、メンバーもモチベーションを高めながら開発できます。これまで社内でやっていたβ版レビューを、ユーザーを巻き込みながら進めていく。そんなイメージです。

僕はこれを「ユーザー巻き込み型」のサービス開発と呼んでいます。昔であれば競合に真似される可能性があったため、水面下で開発を進めていく会社が多かった。

最近は、開発サイクルが早くなっていること、近しいサービスが海外から流れ込んでくるので、アイデア単体では競合優位になりにくい。社会的意義への共感や熱量の高いユーザーを確保しているブランディングが競合優位になりつつあると思います。「ユーザー巻き込み型」の開発プロセスで健全にユーザーと向き合っているチームが差別化になります。

━━デザイン思考やユーザー巻き込み型の開発は、価値観が多様化して情報発信の手段が増えた現代に沿った手法なんですね。

昔は材料を集めまくってロジカルにじっくり考えていた意思決定プロセスが、少しずつアジャイル(高速化)しています。それが近年は、ユーザーの視点も巻き込んでいくようになりました。開発側にいると、手を動かしたりユーザーと対話したりといったアクションが、どんどん早回しになっているのを実感します。

独立企業だから、素早く意思決定できる



僕のキャリアは、プロトタイプを作ってユーザーに評価してもらいながらモノづくりを進めるスタイルですが、それをより大きなステージで実践するという点で一貫しています。

僕はもともとデザイナーとして活動していましたが、DeNAではデザイン戦略室を立ち上げました。その後、BCG Digital Ventures でユニ・チャームとデザイン思考をもとにプロジェクト型の事業開発を行いました。

その結果、立ち上がった会社がOnedotです。立ち上げ後はCCOとして、クリエイティブの側面から経営をサポートしています。デザイン思考という言葉は目新しくないですが、実際に会社を立ち上げ、サービスの運営までやっている人はまだあまりいないはずです。

━━ユーザーの意見とサービス内容をすり合わせるのはとても重要な仕事だと思います。その一方で、企業の上部でこうした動きをするのは容易ではなさそうですが……。

COOである僕だけでなく、CEOの鳥巣もBCG Digital VenturesからOnedotに移籍した人物です。OnedotはBCG Digital Venturesとユニ・チャームとの共同出資で立ち上がった会社ですが、CEOとCCOに権限が与えられており、裁量をもって経営ができています。
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構成=野口直希 写真=小田駿一

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