普通交付税を受けていないということは、すなわち財政的に健全で、自立した行政運営を行う地方自治体であるということ。和光市は、2011年度に普通交付税の交付団体に転落したが、2016年度に不交付団体へと復帰した。
その5年の間に、「普通交付税等に依存することなく財政運営が行えるよう、歳入の確保をはかるとともに、事業内容の見直し及び受益と負担の適正化などの行財政改革をさらに推進。将来にわたり健全で安定的な財政運営ができるように努めてまいります」と宣言し、市政に邁進してきたのが松本武洋市長だった。
松本は、その実績から、昨年5月の市長選挙では、90.5%という驚異的な得票率で3選を果たした。聡明でありながら泰然とした雰囲気があり、住民からの支持や信頼も厚い。
くじ引きで選ばれた市民が「事業仕分け」
松本は、新卒でベンチャーキャピタルに就職し、その後、経済系の出版社2社に勤めた経歴を持つ。2003年に無所属で出馬した和光市議選で当選、その後2009年に和光市長選に勝利し、40歳の若さで市長となった。
市長就任後すぐに、学校建設以外のハコモノ建設は一旦すべて凍結。既存事業についても、市民や外部の第三者視点で事業の検証を行った。国が民主党政権時代に行った、いわゆる「事業仕分け」と呼ばれるものである。
「大規模事業検証会議」というものを立ち上げ、この委員をなんと「くじ引き」によって市民から選んだ。市民全体の意見を集約できるよう、年代別、男女別、地域別などでくじ引きを行い、その当選者に招待状を出す。当選者のうち委員を希望した者のなかから、さらにもう一度くじ引きを行い、最終的に委員を決定した。
当時、市民から委員を公募するということ自体かなり先進的だった。ただし、単に公募を行うと、同じ人がさまざまな委員を兼任したり、同じ考えのグループから何人もの人が参画したりして、委員に偏りが生じるリスクも存在する。それで、くじ引きを導入したのだ。
くじ引きによる公募は手続き的には骨の折れるものではあったが、特定の層や利害関係に偏らない環境で、市民がオープンに議論できる場の構築につながった。