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2014年版ジャパンリッチリストに新たにランクインした5人のうち、4人をIT起業家が占めた。彼らが躍進した理由は、あるビジネスモデルにある。なぜ、IT起業家は“リッチ”になったのか。

2014年版のジャパンリッチリストで目を引くのはIT起業家の台頭だ。ソフトバンクの孫正義社長(1位)、楽天の三木谷浩史会長兼社長(4位)、グリーの田中良和社長(18位)などの常連組や13年にTOP50入りを果たしたスタートトゥデイの前澤友作社長(22位)に加え、今回新たにコロプラの馬場功淳社長(15位)、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの孫泰蔵会長(30位)、サイバーエージェントの藤田晋社長(47位)、GMOインターネットの熊谷正寿会長兼社長(49位)の4人がTOP50入りを果たしている。

TOP50の中に8人ものIT起業家が名を連ねているという事実は、経済界においてIT企業がすでに一大勢力を占めていることを端的に物語っている。

グーグル、ヤフー、アマゾンと同じビジネスモデルでの成功
 
冒頭にIT起業家の台頭と書いたが、事業が拡大するにつれて投資効率がよくなり、利益率が高まる「収穫逓増型ビジネスモデル」の台頭と言い換えたほうが実態をより明確にとらえることができる。従来型のビジネスモデルは規模の拡大を図った先に「収穫逓減の法則」が待ち構えており、投資効率が次第に悪くなるのが通例である。
 
それに対して、収穫逓増型ビジネスモデルの場合には、一度、損益分岐点を超えてしまえば、それから先は大きな追加コストをあまり必要としないため、伸びた売り上げのほとんど全部が利益になる。
 
その典型がWebビジネスである。上場企業の営業利益率が平均4〜5%であるのに対し、Webビジネスを手がけるIT企業の中には40%超、50%超の営業利益率を誇る超高収益企業が珍しくない。IT企業の代表格であるヤフーの2013年度の営業利益率は51.1%である。
 
グーグルやヤフー、アマゾンなどの海外勢をはじめ、楽天、グリー、スタートトゥデイ、コロプラ、ガンホー、サイバーエージェントなどのサクセスストーリーはいずれも収穫逓増型ビジネスモデルによって語ることができる。これら超高収益企業の創業社長が長者番付の上位に名前を連ねるのは時代の趨勢であり、しごく当たり前のことだといえる。最近はあまり使われなくなった「ニューエコノミー」が、概念としてではなく実態として台頭してきたことを実感させられる結果である。

数億円の借金から見事に浮上した孫泰蔵氏
 
今回30位に初登場したガンホーの孫泰蔵会長の起業家人生は、収穫逓増型ビジネスモデルとの出会いでガラッと変わった。孫氏が起業家として名乗りを上げたのは東大在学中の1996年2月。知人に融資してもらった1,000万円を資本金に充て、学生仲間と共にインディゴを設立した。ネットワーク・インテグレーション、ソフトウェア開発、コンテンツ開発など、インターネット回りの一切合切を受託していたインディゴは時代の波に乗って急成長を遂げ、設立数年後には上場の準備に入る。

ところが、主幹事会社や監査法人が決まり、必要な書類もすべて書き終え、数カ月後には晴れて上場……というタイミングで、孫氏はあろうことか上場を取りやめてしまう。ベンチャー企業を取り巻く時代の熱気に煽られて上場へと突き進んだが、冷静になって考えるとパブリック・カンパニーとしてやっていくには会社も自分もまだ若すぎると判断したからだ。

それからほどなくITバブルが崩壊する。1999年に約8億円だった売り上げは、翌2000年には4億円程度に半減。100人近くいた社員を半分以下に減らすリストラも泣く泣く断行した。金策にも奔走した。創業以来最大のピンチを切り抜けるため全社一丸となるべきところだが、リストラ後の会社の方向性をめぐって社内がギクシャクしてしまう。

孫氏は受託仕事中心の従来のビジネスのあり方を改め、独自のプロダクトやサービスで勝負する方向へシフトすべきだと主張した。しかし、他の創業メンバーは従来通りのビジネスでこれからも手堅くいくべきだという立場を崩さなかった。
 
結果的に社内で孤立してしまった孫氏は100%保有していたインディゴの株をタダ同然の価格で創業メンバーに譲り、会社が抱えていた数億円の借金をすべて引き受けてインディゴを去る決心をする。これが2001年、孫氏28歳のときのことである。
 
インディゴを離れて意気消沈していた孫氏に「これからはブロードバンドの時代だ!」というヒントを与え、発破をかけたのは実兄の孫正義ソフトバンク社長。兄の言葉に奮起した孫氏はブロードバンド時代に自分が手がけるべきベンチャービジネスを見つけるため、当時のブロードバンド先進国・韓国へと視察に出かける。その韓国で孫氏の目に留まったのが韓国の若者の間で大流行していたオンラインゲームだった。

孫氏はすぐさま大人気オンラインゲーム『ラグナロクオンライン』の開発会社グラビティを訪れて同ゲームの日本向けテスト配信の話をまとめてしまう。同ゲームの配信を手始めにオンラインゲームの開発・運営会社として設立した会社がガンホー・オンライン・エンターテイメントというわけである。

2002年に配信を開始した同社初のオンラインゲーム『ラグナロクオンライン』は孫氏の予想を上回る大ヒットゲームになり、会社は急成長を遂げる。設立後3年(2005年)で大証ヘラクレスに上場を果たし、1株120万円の公募価格に対して420万円の初値がついた。一時期は1株2,000万円強まで高騰して話題になったものだ。「ユーザーが増えれば増えるほど収益が増えていく収穫逓増型のビジネスモデルなので、スタートしたときから最短でIPOするぞと思ってました。その通りになった」と孫氏が語ってくれたことがある。
 
その後、2012年2月にサービスを開始したスマートフォン向けゲーム『パズル&ドラゴンズ(以下、パズドラ)』が爆発的に大ヒットし、これによって2011年12月期に16億5,700万円だった純利益(連結)が2012年12月期には約82億900万円に、2013年12月期には547億6,800万円に急増している。2013年5月13日には株価が134万2,000円をつけ、時価総額が1兆5,455億円になり、任天堂の1兆5,342億円を抜いてこれまた話題になった。
 
任天堂自体も1980年代以降、独自の収穫逓増型ビジネスモデルを確立して世界のゲーム市場を席巻した巨人であることを考えると、その任天堂の時価総額をガンホーが『パズドラ』のヒット一発で追い抜いてしまったのだから、これは産業史におけるひとつの事件だといっていい。同じ収穫逓増型ビジネスモデルでも、ネットを活用した収穫逓増型ビジネスモデルの成長力がいかに大きいかをこの事件は端的に物語っている。ちなみにガンホーの2014年第1四半期(1〜3月期)の営業利益率は57.7%ときわめて高い水準にある。
(以下略、)

滝田誠一郎(ノンフィクション作家/ジャーナリスト)

 

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