当日開催されたカンファレンス「London Tech Week」の場で、カーンは「ロンドン本拠のAI企業の数は、パリやベルリンの企業の2倍近くに達している」と述べた。
カーンが発表したAIレポートはロンドン本拠のAIアドバイザリー企業「CognitionX」の協力でまとめられた。その資料によると、2017年にロンドンのAI企業に対する投資額は2億英ポンド(約296億円)を突破し、前年比で50%以上の伸びとなった。
この金額は昨年、ロンドンの全テクノロジー企業が調達した24億5000万英ポンド(約3620億円)の10%近くに達する。ロンドンで最も人気のAIセクターは、金融や保険、法律関係だという。
ただし、CognitionXによる “AI企業”の定義が広範囲に渡っていることは指摘しておきたい。ロンドンに拠点を構えるAI企業は758社あるが、ここでいうAI企業とは「過去に少なくとも1つ以上のAIプロダクトを販売した会社」を指している。
また、ここには一般的にはAI企業と呼ばれない企業も含まれている。その例にあげられるのがフードデリバリー用の自動運転ロボットを開発する「Starship Technologies」などだ。さらにいうと、今回のレポートにはAI関連のプロダクトを一切持たず、過去にAI関連の調査を実施しただけの企業も含まれていた。
カーンがここまでロンドンのAIの優位性を打ち出す背景には、英国のブレグジット(EU離脱)にからむネガティブなイメージを払拭し、イギリスのテクノロジーの先進性をアピールしたい狙いがある。
「ロンドンは金融やビジネス、テクノロジー分野のハブ都市であり、これは我々にとっての大きな資産だ」とカーンは述べ、ブレグジット以降もこの状況は変わらないと付け加えた。
しかし、英国のEU離脱を前にすでにネガティブな動きも起きている。欧州のファンド「European Investment Fund (EIF)」は英国のスタートアップへの支援を、ほぼ全て中止した。
フォーブスの取材に応えた現地のベンチャーキャピタルの1社は、「EIFは英国のEU離脱を受けて、ぎりぎりのところで支援の中止を申し出た」と述べた。イギリスの「British Business Bank」はこの穴埋めをすると宣言したが、彼らの動きはEIFよりもかなり遅いという。
さらに、スタートアップを支援してきた英国の銀行は、ブレグジットを控えて人員の多くをEU圏内に移動させはじめている。この状況が続けば英国のスタートアップの資金源が干上がることにもなりかねない。