ビジネス

2018.06.15

W杯開催地・ロシア 実はスタートアップ大国だった?

サッカーワールドカップ開催地 ロシアのイノベーション都市と人の関係性


世界中で注目されるロシア人技術者


イーサリアムの生みの親 ヴィタリック・ブテリンはロシア系カナダ人(Photo by John Phillips/Getty Images for TechCrunch)

ロシアを語る上でもう一つ外せないのが、「人材」である。いま、ロシアのスタートアップが活発になるにつれ、同時に諸外国からロシア人技術者に対する注目が高まってきているというのだ。

デロイトトーマツベンチャーサポートのヤッコ ラヤニエミは、ロシア人の特徴を「ソ連時代からのなごりで、ロシア国内では理数系教育が熱心。地頭が良く高い技術を持った人が非常に多い」と語る。

それを示すのが、「ACM-ICPC」という、国際大学対抗プログラミングコンテストの実績だ。MITや北京大学など、世界有数の大学から精鋭たちがチームを組んで参加するこの大会では、今世紀に開催された18回のうち、ロシアの大学はなんと12回の優勝歴を誇る。今年開催された2018年度大会は、予選を含め111カ国、3,098大学、5万3446人が参加したが、またもやロシアの大学がワンツーフィニッシュをした。

この点について、現地の起業家たちをよく知る大坪も同意する。「私はシリコンバレーにもよく行きますが、シリコンバレーでは“できないことはロシア人にやってもらえ”という、格言めいた言葉があります。ロシア人エンジニア1人は、インド人エンジニア5人分だとも言われるほど、彼らの技術力や自頭の良さは世界中で評価されている。

グーグルの共同創設者であるセルゲイ・ブリンもロシア人ですよね。純粋なロシア人ではなくとも、ウクライナやエストニアなど、旧ソ連国出身で、現在世界で活躍する起業家は非常に多い。日本の某大手IT企業では、いままさに、ロシア人エンジニアを数十人単位で採用しようとする動きがあります」

続けて大坪はこう話す。

「ユダヤ人は非常に頭の良い人種だと言われていますが、ユダヤ人の半数以上は元々旧ソ連国に属していました。イスラエルが、かつての農業国からIT先進国として生まれ変わったのは、ロシアの優秀な人材が大きく寄与しているからであるという見方もできます。“パブロフの犬”で有名な生物学者イワン・パブロフや、元素の周期律表を作成した科学者ドミトリ・メンデレーエフなど、歴史を振り返るとロシアには多くの偉大な研究者が存在します。その血を継ぎ、英才教育を受けた優秀なロシア人技術者たちは、シリコンバレーのみならず、いまはイスラエルやフィンランド、エストニアなどの国に多く流れています」

モスクワに拠点を置く「INS」というスタートアップは、ブロックチェーンによって小売流通にディスラプトを起こそうとする企業で、2017年末にICOで6万イーサ(約4300万米ドル)を調達した。

イーサリアムの考案者ヴィタリック・ブテリンもロシア系である。いまは特にフィンテックや流通の領域が目立って入るものの、ロシア大統領選挙の出口調査にブロックチェーンを利用するなど、その活用方法は多岐にわたっている現状がある。数理的・論理的な思考が求められるブロックチェーンを活用したビジネスは、ロシアから今後さらに増えてくるだろう。

スコルコボを中心としたスタートアップエコシステムのさらなる成熟、それと同時に優秀な技術者たちの国内外における活躍があいまった時、ロシアはさらなる飛躍を遂げる。言語の壁こそ厚いものの、いま急速な変革が起きているロシアへ、これを機にぜひ目を向けてみてはいかがだろうか。

Forbes Japan

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