濱松誠 / One JAPAN代表
──MBA、ベンチャー出向……「地域に行く」は憧れをつくれるか?
キャリア志向のビジネスパーソンの能力開発には変遷がありました。1980年代後半バブル期以降は海外MBA取得のための留学が注目され、最近では「ベンチャー出向」や「複業(副業)」でしょうか。これらが「かっこいい」と思われているように、これからは「地域」も選択肢に入ってくるべきだと思うんです。
企業の垣根を越えてイントレプレナーが集う「One JAPAN」を立ち上げて、1年半ほど経ちますが、その潮流が起き始めているのを感じます。
かつては、大企業の社員の多くが地域に対して「左遷先」というマイナスイメージを持っていました。しかし、今や「地域に関わること」は、大企業の社員の可能性を広げる手段へと変化してきているのです。
藤沢烈氏が提唱している「ローカルキャリア」も、そうした時代の流れを象徴しているといえるでしょう。「田舎暮らし」をするのではなく、留学や転職するのと同じように、地域にキャリアを積みにいくという発想です。起業までいかなくても、会社に籍をおいたまま、出向や、あるいは複業(副業)というかたちでどんどん地域に飛び出していくといい。
それを組織として実行しているのがソフトバンクとリクルート、JT、オリエンタルランド、日本郵便です。これらの企業は、長野県塩尻市の自治体が主宰するMICHIKARAに参加し、社員が地域に実際に足を運んでいます。そして、地域の人たちとチームを組んで「子育て世代の復職・両立支援」「空き家対策」などの地域が抱える課題を解決しています。
大企業の社員は、実際に地域に行くことによって、都市のビルのなかにいては見えてこない、日本が直面する課題を肌で感じることができる。そして、普段の業務では協業することのできない地域の多様な人たちと課題を解決していくプロセスのなかで、リーダーシップ力やマネジメント力を開花させる絶好のチャンスとなるのです。
大企業の社員こそ「外」に出ていく必要がある。「外」のひとつの選択肢が「地域」。大企業のなかで能力を持て余してしまっている社員がいるのであれば、地域は無限にあるのだから、どんどん外に出ていって自己成長・キャリアアップの機会を自らつくるべきです。
全国各地域をまわって歩いていると、地域の人たちも、志高い大企業の人が地域にやってくるのを待っていることを感じます。僕も最近、地域に行く機会が増えてきましたが、地元の人たちの熱意をとても強く感じています。
なにかやりたいし、力は持っているのだけれど、まだそれを発揮するフィールドを見つけられていない。そんな人には、どんどん地域に出ていってほしいですね。