巨大な工場はもういらない 米スタートアップが描く21世紀の製造業

ディバージェント3Dの工場で作られたスポーツカーの試作品を磨く創業者兼CEOのケビン・ジンガー

クルマなどの工業製品は、巨大な工場で大量に同じものが製造されている印象を持つ人は少なくないだろう。

ところが、米技術開発企業「ディバージェント3D」の創業者兼CEO、ケビン・ジンガー(58)は違う未来を予測している。21世紀の製造業は、郊外のどこにでもある小規模の工場がネットワークでつながるというのだ。

「従来の自動車製造は、経済的にも環境保護の面でも根本から破綻しています。市場の変化に合わせるために、工場を拡大・縮小できませんから」とジンガーは語る。

典型的な自動車工場の場合、製造や機材の維持費に年間5億〜10億ドルかかるため、利益を生むにも大量生産が不可欠だ。その点、「ディバージェント3D」なら5000万ドル(約55億円)程度あれば、3D金属プリンターやレーザーカッター、組み立てロボットを揃えた倉庫型の工場で製造ラインを組めるという。既存企業よりも安価で効率的、かつ環境に優しい方法で製造できるのだ。

同社は、製造業社にライセンスを提供する形のビジネスモデルを考えている。

確かに、同社が造っている製品はまだ試作品に過ぎない。だがフランスの大手「グループPSA」との提携が決まるなど、自動車メーカーからは熱い注目を集めている。

文=アラン・オンズマン、ジョアン・ミュラー 写真=イーサン・パインズ 翻訳=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 「地域経済圏」の救世主」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事