ビジネス

2018.06.22

アジア全域を勝負のフィールドにした、日本人起業家の哲学

「日本のことは好き」と口にする一方で、アジア全域を勝負のフィールドに選んだ日本人起業家がいる。

グローバルで勝つために──、エニーマインドグループ・十河宏輔が語る勝ち筋とは。


「1カ月で7カ国は訪れています。3日に1回は飛行機。今日も深夜便で東京からバンコクに飛びます」。

シンガポールに本社を構え、AI(人工知能)を活用したインターネット広告やマーケティング、HRテックを手がけるエニーマインドグループ。その創業者・十河宏輔は2016年4月の前身企業の創業以来、成長著しいアジア市場を、文字通り、縦横無尽に行動している。

「最初からグローバルで勝負する。アリババ集団や騰訊控股(テンセント)のように世界的に影響力があり急成長している"かっこいい企業"をつくりたい」。

前職時代、東南アジア6カ国で事業立ち上げを行い、満を持して29歳の時に創業した十河。彼の起業時からの思いは、行動として継続されている。創業年の16年にはシンガポール本社に加え、タイ、インドネシア、ベトナム、台湾の4拠点を設立。翌17年には、カンボジア、日本、中国(上海・香港)、18年もすでにマレーシアで展開を開始した。

「ひたすらアクセルを踏んでいる状態(笑)。ただ、成長産業なので、複数国でゼロイチの立ち上げを今やれば、来年またさらに伸ばせますから。そこには国内・海外という議論はないし、海外比率という言葉もないです。市場があるかどうか」。

資金調達も、17年に、シリーズAラウンドとして中国を除くアドテク企業では最大規模となる1450万ドル(約16億円)を調達。また、同年にはM&A(合併・買収)も実施。現在の社員は271名、売上高は28億円に上るという。

「例えば、僕らはタイで成果が出ているので、タイ市場に集中することも方法として正しい。ただ、多国展開を選んでいる。その理由は、多くの国にスピーディに進出し、国ごとに成長ステージが異なる展開の方が、企業として高い成長率を維持することにつながると思っているからです」。

十河が見据えるのは、米国上場をはじめとした海外も視野に入れた株式上場(IPO)であり、リクルートのような時価総額4兆円を超える企業だ。そのため、まずは年内にアジア4カ国での立ち上げを予定。社員も400人規模になるという。

創業わずか3年目で14カ国・地域に進出するスピード感を落とさず、創業時の志とともに十河の挑戦はこれからも続いていく。


十河宏輔◎エニーマインドグループ共同創業者兼CEO。1987年生まれ。日本大学商学部卒業後、マイクロアドに入社。15年同社取締役兼東南アジア拠点CEOに。16年4月前身企業のアドアジアホールディングスを設立、18年1月現社名に名称変更し、現在に至る。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=平岩 亨

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