ビジネス

2018.06.20

IoT推進ラボ、創業支援カルテット 「北陸・東海」を救う人、事業

「地域を救う人、事業」。毎年、この特集で気づかされる「人間の本能」がある。小さな可能性を見つけて、それを広げる努力ができることだ。環境は千差万別。忘れ去られた伝統や習慣から最先端のテクノロジーまで、ヒントは全国に落ちている。アドバイザリーボード10組が推薦・投票した全国の事例から、得票数が高かったものを全6回に分けて紹介しよう。第3回は北陸・東海地方。


愛知県岡崎市 / OKa-Biz
──大盛況!「行列のできる中小企業相談所」の仕掛け

中小企業が大手企業と同じ土俵で戦っても、規模の経済で太刀打ちができない。だが、独自の付加価値を打ち出すことができれば、勝機は掴めるはずだ。

中小企業の“頭脳”として、事業運営をサポートするのが愛知県岡崎市のOKa-Biz。中小企業から地域を元気にしようと、岡崎市と岡崎商工会議所が共同で立ち上げた。センター長の秋元祥治は、大学時代に中小企業と若者をインターンシップで繋ぐNPO法人G-netを立ち上げた経験を持つ。富士市産業支援センターのf-Bizをモデルに、専門家チームで総合的に経営をサポートする。

事業アイデアの企画から人材採用、事業運営、ITといった中小企業の課題に、エンジニアやデザイナー、コピーライター、中小企業診断士、銀行員など、各分野の専門家がこたえる。設立4年目となる2017年の相談件数は2550件にのぼる、“行列のできる中小企業相談所”だ。

石川県白山市 / 白山市IoT推進ラボ
──里山は「最先端やり放題」の白地図だ


2014年に閉鎖した「かんぽの郷白山尾口」を改装した金沢工業大学白山麓キャンパス。里山都市のエコシステムの実現を目指す。

「里山まるごと実験ラボ」の謳い文句通り、里山をドローンが飛び、IoTデバイスで里山自然環境をオープンデータ化してと、まさしく「最先端やり放題」になっているのが、白山市である。子供から大人まで「イノベーティブに成長できる里山都市」を形成するため、2018年3月に完成した金沢工業大学白山麓キャンパス内に、「白山市IoT推進ラボ」を発足。

チームには、NTTドコモ、アイ・オー・データ機器などの企業が参加。IoT、ビッグデータ、AIなどの先端技術を駆使して実証実験が行われている。

「3次元空間情報を収集し、自動運転やドローンの自動飛行への活用」や、「人工知能を活用した里山に住む方々の成長支援システム」などという実験が日々行われている里山は他にないだろう。また、同大学はIBMの人工知能Watsonを実装し、学生1人1人に合わせた教育を目指す。

石川県七尾市 / ななお創業応援カルテット、能登留学、能登の人事部
──人事、留学、創業。どこでも真似ができる「受け皿モデル」


既存産業だけでなく、郷土料理店の経営立て直し、道の駅のプロモーション、インバウンドなど地域活性の仕事も多数

「スター不在の地域創生を実践する地域。だからこそ、全国のどの地域でも真似することができるモデルケースになりうる」と、ETICの宮城治男は七尾市を推薦する。

地域で中心になるのは、どこにもあるオーソドックスな布陣だ。市役所、日本政策金融公庫、地元商工会議所、信用金庫が、2014年から「ななお創業応援カルテット」を形成。確実に創業してもらえるように徹底的にサポートする。その結果、40件以上の企業が生まれた。

一方、七尾市のまちづくり会社「御祓川(みそぎがわ)」が担い手不足に取り組む。08年から「能登留学」と銘打ち、全国から大学生を中心に7年間で250人が参加。シェアハウスに滞在して、漁業、農業、製造業、旅館などに従事する。交流人口を増やすだけでなく、社員研修と採用を支援する「能登の人事部」も提供。代表の森山奈美は、「人材の定置網をかける」と意気込む。

文=Forbes JAPAN 編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 「地域経済圏」の救世主」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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