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重要になるのがサステイナビリティに関する取り組みだ。Enel Groupは、2015年にSDGs(持続可能な開発目標)に対応する数値目標を定めた。具体的な事例の一つは、2020年までにアジア・アフリカ・南アメリカのいままで電力インフラにアクセスがなかった300万人にクリーンで安価なエネルギーを提供するといったもの。

もうからないのでは?という指摘に対して、チョーラは自信たっぷりにこう答える。

「そもそも大規模な社会課題の解決は、長期的に膨大な収益をもたらす。いままで、技術的にも、ビジネス的にも困難だと思われていた辺境で電力を提供できるようにする。このチャレンジを成功させるためには、常にイノベーションが必要になってくる。人々の幸せを実現しながら、イノベーションを追うためには大規模な社会課題を解決することがまさに鍵になる」。

チョーラは、Innovabilityの一例としてチリの地熱発電プラントの事例を挙げる。このプラントが建設されたセロパベロンは、海抜4500メートルの高地にあり、かつボリビアとの国境に位置する内陸の辺境。物資を輸送するだけでも困難が伴う。その土地でクリーンかつ安価なエネルギーを提供するチャレンジこそ、まさにInnovabilityの創出なのである。

そして、ここで得られた多くの知見・経験が次世代の事業を牽引する優位性になっていく。

シンポジウムを主催したALCANTARAS.p.A.(アルカンターラ社)CEOアンドレア・ボラーニョもチョーラと志をともにする。「事業活動と結びついたサステイナビリティの取り組みこそ重要。寄付的な活動は持続可能ではない」と、語気を強めて語る。

ALCANTARA S.p.A.は、リーマンショック後の2009年、強欲な資本主義の崩壊を目の当たりにし、供給側としてより持続可能な世界の実現に貢献することを決意する。2009年以降、サプライチェーン全体を改革し、事業活動から出る二酸化炭素の排出を相殺するカーボンニュートラルの取り組みをイタリアで初めて導入した。


高級車の内装素材として知られる、スウェード調の人工皮革アルカンターラ。

そして、その活動の成果もあり、売り上げは2009年以降一貫して増加。現在は、好調な受注が生産能力を上まわったため、生産設備の増強に向けて約3億ユーロに及ぶ大規模な投資を決定し、生産設備を2倍に拡張する計画を進めている。

経済の原義である経世済民の考え方。まさに言葉の通り、経済とはそもそも「世を経(おさ)め、民を済(すく)う」活動である。地球をより持続可能にしていくという取り組みは、まさに経済らしい活動なのである。

企業は、イノベーションとサステイナビリティが一体となったInnovabilityの取り組みを通して、一層、原義的な意味でいう経済を活性化させてゆく。


エルネスト・チョーラ◎イタリアエネルギー大手EnelGroup Chief Innovability Officer。1971年、イタリア生まれ。ボッコーニ大学を優秀な成績で卒業。イノベーションに特化したコンサルティング会社を設立し、ユニリーバなど世界的企業のコンサルティングを手がける。同社を売却後、2014年に現職に就任する。

アンドレア・ボラーニョ◎アルカンターラ会長兼最高経営責任者。ボッコーニ大学でMBAを取得。ピレリ社などイタリアを代表する企業でシニアポジションを歴任し、2004年にアルカンターラ社社長に就任。2006年から同社会長に就任し、2007年からは東レのシニアディレクターを兼任

構成=青山 鼓 小田駿一=文・写真

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