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Mascha Tace / shutterstock.com

5年前、ビリオネアのマイケル・デルは自身の名を冠したPCメーカー「デル(Dell)」をMBO(経営陣が参加する買収)により非公開化した。デルは自分がオーナーとなって経営再建をした方がより多くのPCを販売できると考えたのだ。

ヘルステック企業「Withings」創業者のエリック・カレル(Eric Carreel)も、ノキア傘下となった同社の再建について同じように考えていた。フランス出身で穏やかな口調と銀髪が特徴のカレルは、2008年にWithingsを設立した。そのカレルは先週、同社をノキアから買い戻したことを発表した。買収額は明らかになっていない。

ノキアは2016年に約2億ドル(約220億円)でWithingsを買収し、「ノキアデジタルヘルス」を立ち上げた。しかし、今年初めになってネットワークインフラ事業に注力するためにヘルスケア事業の売却を検討し、グーグル傘下の「ネスト(Nest)」をはじめ、複数の企業が買収に関心を示していたとされる。

パリに本拠を置くWithingsは、フィットネストラッカーを搭載したスマートウォッチや、スマート体重計、血圧モニターや睡眠をトラッキングするマットなどを製造・販売している。製品ラインナップは、ノキアに買収される以前と大きく変わっていない。

2年ぶりに同社の経営トップに返り咲くカレルは、健康により直接的な影響を及ぼす製品の開発に注力していくとしている。ノキアの傘下に入った後、カレルはノキアのCEO、ラジーブ・スリ(Rajeev Suri)のデジタルヘルス・アドバイザーに就任した。「スリは多忙だったため、会って話す機会はあまり多くなかった」とカレルは言う。

カレルは2017年初めにノキアを去ってから今日まで、友人らとWithingsをどのように経営すべきだったか語り合ったという。彼が悔やむのは、ライバルの「Fitbit」を意識し過ぎたあまり、独自の製品を開発することができなかったことだ。

競合のFitbitに破れた理由

サンフランシスコ本拠のFitbitは2015年6月にIPOを果たし、3億5000万ドルもの資金を調達した。FitbitはIPO以前に投資家から10億ドルを調達していたのに対し、Withingsは「360 Capital Partners」や「IdInvest Partners」などフランスのVCから3400万ドルしか調達していなかった。

また、Fitbit はWithingsが参入を目指していたアメリカで既に大きなシェアを獲得していた。さらにFitbitがウェルネス(広義の健康)とスポーツを主力事業にしていたのに対し、Withingsはより限定的なヘルス市場をターゲットにしていた。

「投資家への説明が不足していた上に、私自身も将来的に大きな収益を生み出す自信がなかった」とカレルは述べ、次第に投資家の間で成長性に対する不安が大きくなっていったという。

編集=上田裕資

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