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2018.06.16 15:00

アイルランドの歴史を体験できるゴルフコースの魅力


このゴルフ場のシンボルで、18番ホールのティーグラウンドの後ろに見える灯台は、1853年に建設されたものである。ラウンド中にキャディーが教えてくれたが、沈没したタイタニック号が最後に通過した灯台だということだ。なるほど、太西洋の先端に臨んだ位置とアメリカと欧州を渡る重要な海路だとして想いを馳せることになった。ちなみに、かつて1667年と1814年に建てられていた灯台の跡は、6番ホールと7番ホールのそばに残っている。

コーク海岸沿いは船の海難場所としても有名だ。最も有名な船舶は、1915年に沈んだルシタニア号だ。当時世界最大の旅客船だったルシタニア号の沈没事件では、1198名の乗客の命が奪われた。ドイツの潜水艦U-20に攻撃されたことが原因とされ、それまで中立国の立場をとっていたアメリカが第一次世界大戦に参戦するきっかけとなったと言われている。まさに歴史を変えた場所であろう。


灯台を望む18番ホール。近隣の海域で発生したルシタニア号の沈没事件は歴史の転換点となった。

我々がオールド・ヘッドに到着したのは、夕方遅くのことだった。門は閉ざされており、その壮大さに「どこか有名人の別荘地に紛れ込んだのではないか」と思ったが、連絡をすると中の人が車で迎えに来てくれ、無事にチェックインすることができた。

石造りの宿泊施設は、それはそれは素晴らしかった。夕食も、それまで美味しいながらも質素なアイルランド地元料理を中心に食していた我々からすると、ワインリストも含めてまさに高級リゾートの様相で、久しぶりに豪勢な食事とワインを楽しんだ。

翌日のプレー中は、ゴルフコースの景色に圧倒された。大西洋に2マイル以上飛び出した半島は、220エーカーの敷地のうち、ゴルフ場と練習場が180エーカー、残り40エーカーの断崖絶壁で構成されている。高さ300フィートの断崖の上に作られたコースは、岬にそびえる灯台の眺めと合わせて見たこともない風景である。

パー72のコースは、パー5が5つ、パー3も5つあり、パー4は8つだけである。距離も女性用の5413ヤードから競技選手が使用するフルバックティーの7100ヤードまで用意されており、あらゆる階層のゴルファーが楽しめるようになっている。海越えのいくつかのパー3は、もう天国のようだ。
 
全英オープン選手権などのチャンピオンシップが開催されておらず、また有名なゴルフ設計家が絡んでいなかったため、一部には「眺めだけのコースだ」と批判する向きもある。しかし、世界ゴルフ場巡り愛好家としては、必ず訪れなければならぬ名品のひとつであろう。


小泉泰郎◎FiNC 代表取締役CSO/CFO。東京大学経済学部卒。日本興業銀行、ゴールドマン・サックスで計28年活躍。現役中から、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢・発起人、TABLE FOR TWO Internationalのアドバイザーなど社会貢献活動にも参加。お金のデザイン社外取締役、WHILL、FC今治のアドバイザー。

文=小泉泰郎

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