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2018.06.14 07:30

服ではなく「生地」が売れる 世界における国内ブランドの勝ち筋とは

Olena Yakobchuk / Shutterstock.com

Olena Yakobchuk / Shutterstock.com

日本繊維輸入組合が5月に発表した「日本のアパレル市場と輸入品概況」によると、2017年の衣料品の国内生産量は前年比約8%減の9840万点となり、数量ベースの国産品割合はついに2.4%にまで落ち込んだ。

バブルの頃は数量ベースで約10億点あったことを考えると、国産品はこの30年間で数量ベースで10分の1になってしまったことになる。金額ベースではまだ約20%あるとはいえ、このニュースのインパクトは流石に大きく、各種メディアで報道されたことは記憶に新しい。

このようなことが起きている背景には、一義的にはファストファッションの浸透やデフレの影響による衣料品の単価下落に対応すべく、多くの国内アパレルが生産を海外に移転してきたことにある。また、工場側では工賃が伸びない苦しい経営が続く中で、労働者不足や後継者不足に伴い、廃業を選択してきた工場が多いことも要因だ。このままでは国内生産背景は、文字通り風前の灯といった状況である。

それでは、国内の生産背景をもう一度活性化させるためには、何を解決すれば良いのだろうか。あくまで私見であるが、解決すべき国内アパレル産業の課題は、海外で売れる付加価値の高い国内生産ブランドが育っていないことにある。

下記の図は、主要国におけるアパレル輸出額の構成比を図示したものである。これをみると、日本が非常に特殊な構造となっていることが一目瞭然だ。それは、衣料品の最終製品輸出が極端に少ないことにある。

イタリアは約2.4兆円、フランスは約1.1兆円の衣料品を輸出しているのに対し、日本は400億円弱しか輸出できていない。中国はブランドではなくOEM/ODM製品の輸出なので話は別だが、製造業の空洞化が叫ばれるアメリカでさえ約5600億円の衣料品を輸出できているにも関わらずだ。

国内にアパレル企業は沢山あり、巷には国内ブランドが溢れかえっているにも関わらず、約9兆円の国内市場に頼り、海外には輸出できる国内生産ブランドは殆ど育っていない(あえて説明する必要はないと思うが、ユニクロや無印良品は国産ではないので、製品輸出額にはカウントされない)。



一方で、生地に目を向けると話は変わってくる。国産生地の輸出額は約3250億円であり、イタリアの約2倍でフランスやイギリスの生地輸出額を上回っている。

実際世界最大の生地見本市、フランスのプルミエールビジョンにおいても、最近多くの国内テキスタイルメイカーが出展しており、日本の生地は間違いなく世界で高く評価されている。東レや帝人のような大手化繊メーカーの素材だけでなく、国内産地の中堅・中小企業の生地がそのクオリティや独自性において評価されている。和歌山のエイガールズや福井の第一織物などはその代表例だ。

しかしながら、衣料品のコスト構造を分解してみると、原材料費は価格の10%~30%程度に過ぎない。従って、産業全体でみると最終製品の輸出で稼いだほうが遥かに効率が良い。要は、日本国内には海外に注目され直接取引されるほど高品質の産地、工場があるにも関わらず、それを付加価値の高い最終製品、ブランドに変えられるデザイナーや企業があまりにも少ないのである。

大きい国内市場に甘えガラパゴス化し、国内産地を活用できる企業やデザイナーがおらずバリューチェーン上で製販の分断が起こってしまっている、これが日本のアパレル業界の構造的な問題である。
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文=福田 稔

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