ビジネス

2018.06.14

「will」がないビジネスパーソンの問題点|松嶋啓介 x 岡島悦子

「KEISUKE MATSUSHIMA」オーナーシェフ 松嶋啓介(左)とプロノバ社長 岡島悦子(右)


岡島:男性経営者って、女性っぽい人が少ないんです。だから、合理的な説明はできるんだけど共感力が弱い。そして、周囲に弱さを見せられない。だから悩みや孤独を受け止められる人という点で、私がいい相談相手なんだと思う。帰ってくる場所っていう意味でも。

松嶋:今回の本でも書いているんですが、(芸能事務所の)アミューズの大里会長にお会いした際、社員や役者に対してすごく愛情があって、人を動かすのは結局“情”なんだと思いました。友情も愛情も人情もそうで、情けが人を動かすガソリンになっているって気づいた。そういう点では情けをかけていますよね?

岡島:かける。弱っているときほど相手に近づきますね。そうしてお腹を見せ合わないと相手も見せられないでしょ。例えば何か事件が起きて、周りの人が遠ざかったときにこそ、私は全然遠ざからないことにしてる。おそらく自分の目利き力に自信があるからだと思う。

松嶋:だから結果として、その会社が良くなった時に、「ここにも岡島悦子がいる。いい会社とばっかりやって。仕事を選んでいるな」ってマイナスイメージになっちゃうことがあるけど違うよね。

岡島:「イケメンばかり選んで……」とも言われるけど、それも違う。結果として彼らの顔つきが良くなってきただけだから。その発掘が楽しいんだろうね、自分では。でも松嶋さんも、怪我をしたサッカー選手とか支えてあげるじゃない? その選手が復活して活躍したりするけど、別にいやらしい気持ちでやるんじゃなくて結果だよね。

松嶋:うん。人がハッピーになるのを見るのが嬉しいからかな。自分が作った料理で人がハッピーになるのを見るのも好きだし。そうすることで、自分の健康状態の良くなることを自分でもわかってる。

薬漬けにするより、体幹を治す

岡島:セロトニン(別名、幸せホルモン)出てるよね。それは結局スタイルなのかな? 一方で、「自分はこうだ!」みたいなのが強い人もいるでしょ?

松嶋:僕は意外とそう思われている(笑)。暴力的なキャラだろうって。「どうだ、俺の料理美味しいだろう!」とか全く思ってないのに。

岡島:松嶋さんの料理は暴力的じゃないよね。暴力的な料理は、塩がキツくてメリハリは効いているけど、愛情を感じないというか、うま味が足りない感じというか。松嶋さんのは毎日食べられる。

松嶋:コンサルタントの世界でも、同じように暴力的なタイプと中長期続けられるタイプがあると思うけど、岡島さんは後者だね。切れないでしょ、人の縁が?
 
岡島:そう、切れない。離れてまた戻ってきたりもする。だからやっぱり“かかりつけ医”なんだよね。手術が必要なほど悪くなって初めて来るわけじゃないし、調子のいい時は来なくていいいし。 

松嶋:治療というより整体師みたいな感じかもね。軸を整えておくみたいな。 

岡島:やっぱり本質が大事なんだよね。例えば「こういう組織改革をやりましょう」みたいな提案をして、薬漬けにして、手術をしてお金をもらうこともできるけど、そんなことをしても本質は良くならない。絆創膏をたくさん貼るより、痛いかもしれないけれど、大事なのは“体幹を治す”ことなんじゃないかな。


岡島悦子◎プロノバ社長。年間200名の経営者のリーダーシップ開発を手がける。三菱商事、ハーバードMBA、マッキンゼー、グロービス・グループを経て、2007年プロノバ設立。株式会社丸井グループをはじめ、複数社の社外取締役。世界経済フォーラムから「Young Global Leaders 2007」に選出。近著は『40歳が社長になる日』。

松嶋啓介◎KEISUKE MATSUSHIMA オーナーシェフ。フランス芸術文化勲章、農事功労章シュバリエ。高校卒業後、辻調理師専門学校で学びながら、酒井一之シェフの"ヴァンセーヌ"に勤務。20歳で渡仏。各地のレストランで働き、2002年25歳でニースにKei’s passionをオープン。外国人シェフ最年少の28歳でミシュランガイドの星を獲得。新著に『「食」から考える発想のヒント』。

編集=Forbes JAPAN 編集部 写真=千々岩友美

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