ビジネス

2018.06.14 11:30

異色の直接金融「ドーガン」のカネ、ヒト、情け

ドーガン社長の森大介


昨年7.4億円の調達に成功したIoT・AIソリューションのスカイディスクでは、2013年の会社設立前からビジネスモデルを作り込み、人材も紹介。地元ならではの経営者に寄り添う支援を続ける。
 
林の理想は、福岡で働きたい人が迷わず福岡で就職できる環境にすること。「東京や海外で働いていても、『福岡に戻りたい』という同級生は多い。ベンチャー企業をそういった人たちの受け皿として育てたい」と話す。
 
こういった森や林、ドーガンの「地域のために」という思いを応援するように、事業会社や個人の出資者が増えている。昨年設立した再生医療ベンチャー、サイフューズを支援する専門ファンドには個人投資家を主に1口500万円、1週間で1億3000万円が集まった。九州の人間関係は近い。森には誰が何に興味があるのかわかる。
 
目指すのは、東京の巨大ファンドによる数十億単位の案件でも、クラウドファンディングのような小口の個人を巻き込む投資でもない。一定の規模の投資家と起業家を結びつける「顔の見える直接金融」だ。
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「投資家の顔が見えるから会社側も緊張感が増して、裏切れない。投資家も会社が抱えるリスクがわかる」
 
従業員約30名に成長した今、森はようやく、創業前にやりたかったことができるようになってきたと思う。

利益と地域を両立できるのか

「最初は儲け方が少ないんじゃないか、と思ったけど、今は森君の方が正しかったのかもしらんな、と思ってるんですよ」
 
その優れた洞察力と投資実績で九州の企業経営者に畏怖される元政策投資銀行九州支店長の石井歓はそう述懐する。
 
ドーガンへの出資案件を部下から相談されたのは05年。前年に設立されたばかりの会社だが、評判は聞いていた。しかし、出資を決めるまで半年間、石井は逡巡した。
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「完全に資本主義でないというか、地域の志向と利益の志向、どちらに重きを置いているのか、それが疑問で。私からすると利益志向が少ない気がしたんです」。
 
石井は今、ドーガンの相談役を務める。

「投資に利益以外の指標をつけるのは間違っているという見方が一般的だったのが様変わりしましたね。社会的な正しさが真剣に問われている。
 
彼らに先見の明があったのかは知らないけど、少なくとも先をいって、うまくいったのは事実ですね。多分、彼らは好きでやってただけだと思いますが」
 
石井は自らの誤りを認めるのを喜んでいるようだった。


森 大介◎ドーガン社長。1967年生まれ。熊本市出身。中央大学法学部卒。91年に日本長期信用金庫に入行。シティバンク、エヌ・エイ福岡出張所所長を経て、独立して同社を設立。

林 龍平◎ドーガン・ベータ社長。1976年生まれ。福岡県太宰府市出身。九州大学法学部卒。住友銀行、シティバンク、エヌ・エイを経て2005年にドーガン入社。17年から現職。

文=成相通子 写真=小田駿一

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