「地域と世界を混ぜる」最新のブランディング戦略


石垣島は、13年3月に新空港の供用がスタート、観光客が大幅に増加。12年の約77万人に対し、17年は約124万人で過去最高を記録。空港内では混雑や行列が常態となり、施設も圧倒的に不足した。際限ないリゾート開発や島の伝統文化の衰退もある。加えて温暖化に伴い、サンゴの白化現象も深刻だ。

「いま石垣島はキャパシティを超える観光客が訪れているため、収容能力をきちんと見極めながら開発すべきではないかという意見が出ています」。
 
観光とキャパシティの問題は、全国的にも深刻で、世界遺産の白川郷で有名な岐阜県白川村は、人口約1700人に対し年間の観光客は約180万人。人のラッシュで「原宿の竹下通り状態」、小学生が通学時に人の波に押し流されてしまう状況だ。

「石垣島では、島の持つ精神的な価値を高めていこうということで、新しいプロジェクトをスタート。世界中のアイランド文化に関心がある人に絞った地域ブランディングを行うことにしたのです」。
 
つまり島を愛する人たちだけに来てほしいと発信し始めたのだ。音楽の力でアイランダーたちを結びつけようと、「The Islanders」というラジオ番組をエフエム東京と組み世界に向けて流している。

「地元のBEGINや吉本多香美さんに出演していただき、島のアイデンティティを高めていく。世界中のアイランダーにも登場してもらい、交流し始めています」。

YouTubeにアップロードした「The Islanders」では、島で暮らす人々のライフスタイルを美しい作品に仕立て、欧米中心に150万再生を記録。
 
今年11月には「アイランダーサミット」を開催し、世界の島国の人たちを呼んで、島のソーシャル・デザインを考える拠点にしようと計画している。
 
今回のプロジェクトは内閣府と石垣市と連携している。石垣島をモデルとして、島の人たちの精神性を大切にした新しい開発プランを確立したい。それが成功したら、日本各地にそのモデルを広げていく。その実験でもあるので、渡邉がGRの仕事として引き受けた。冒頭の5つのうち、「G」の行政と「C」のコミュニティ、海外向けラジオで「M」も絡んでいる。しかし、その中心には島の文化や自然を守るという「大義」が存在している。
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文=稲垣伸寿

この記事は 「Forbes JAPAN 「地域経済圏」の救世主」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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