デザイン思考への拒否感
「無許可で街頭インタビューなんて、警察に通報されてしまいます。そんなこと、できません!」
デザイン思考のワークショップにおいて、若者の一人が真顔で苦言を呈した。
「そもそも道ゆく人にインタビューすることに、何の意味があるんですか?もっと良い機能を開発し、さらにコスト削減を追求する。それこそが、イノベーションであるはずです!」
決められたルールをしっかり守る。BI(Before Internet)の価値観をもとに育てられてきた若者からすれば、それらは当然の反論だった。本心は、見知らぬ人にインタビューすることが怖かったのだ。
「せっかくシリコンバレーまで来たんだ。ここに来たからには、騙されたと思って、まずはデザイン思考のやり方でやってみないか?」
今だからこそ正直に言うが、この議論にはわたしもつい感情的になってしまった。
「なぜ彼らには分からないのか? なぜこんな人選をしたのか? これは人選ミスだ。人員を変更しない限り、このプロジェクトは大失敗するだろう」
恥ずかしながら、当時、わたしは本気でそんなことを考えていた。渋々だが、なんとか彼らを説得することに成功。デザイン思考のフレームワークに沿って、街頭インタビューを敢行した。そして、3日間かけて徹底的にデザイン思考のフレームワークやスキルを彼らに伝授することができた。
シリコンバレーの果てしない青い空とは対照的に、若手3名はどんよりとした気持ちに包まれ、早くも前途多難な船出を迎えていた。
(つづく)
連載:イノベーションに必要なトランスフォーメーション
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