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旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」


「お金」という価値判断の基準も、その機能を果たしきれていない。これは、社会主義の国という点から特に驚くべきことではないが、資本主義というシステムにおける「価格」というものの利便性や、「価格」を通じて確認される価値創造の重要性に、あらためて気づかされる。

日用品を扱う小規模スーパーでは、販売されている商品の種類も限られてはいるが、1商品につき1ブランドが基本なので、そもそも選択肢はない。市場原理に基づいた競争がないため、商品やサービスを改善するインセンティブも低い。フォトジェニックな建築に混じって、何10年も改築されてこなかったと思われる、崩れ落ちそうな建物も散見される。



キューバに訪れている「変化」

多くの旅行客は、ハバナという街を「時が止まったような場所」と表現するようだ。実際、クラシカルな建物や車に囲まれ、企業のビルボードや看板を含め商業的なサインをほとんど目にしない場所に身を置けば、グローバルな消費社会に慣れてしまった人は、ある種のノスタルジアを感じずにはいられないかもしれない。

一方で「変化」もある。ラウル・カストロは2008年頃から、農業やスモールビジネス、国民の不動産所有に関する改革を実施しており、2013年からはWi-Fiも整備され始めた(基本的に無料Wi-Fiは存在しない。ホテルなどでも、宿泊客以外はIDとパスワードが記載された時間制のWi-Fiカードをいちいち購入して利用する必要がある)。

中国企業のスマートフォンも普及しはじめているし、観光スポットにはサムソンのスクリーンを使ったデジタル看板もあり、テクノロジーへのアクセスがないわけではない。オンライン・メディアも登場しつつある。

サイトへの常時接続が限られていても、実際にプリント版が流通していなくても、USBメモリを媒体に、印刷仕様のPDF版を共有し合うというのが、キューバでの情報流通・拡散経路のひとつのようだ。外国人観光客だけでなく、キューバ国民にとっても、選択肢は確実に増えつつある。

ハバナでは、エアビーアンドビー経由で民家を予約したが、カサ・パルティクラル(民泊・民宿)というビジネスモデルは、同社が2015年4月にキューバに進出する以前から、現地には存在していた。

2018年6月現在、エアビーアンドビーには、ハバナだけでも約300の物件が掲載されている。その多くはもともとカサ・パルティクラルとして存在していたもののようだ。同プラットフォームでは、アメリカのカードを含むクレジットカードで通常通りの決済が可能だ。平均家賃は一泊5800円ほどで、最頻値は2500円から3000円の価格帯だ。ちなみに、普通のキューバ人の月給は約30ドル(約3300円)といわれている。

筆者の滞在先のホストは、20代ぐらいの夫婦とその母親で、暮らしている2階建の家の2階の2部屋(それぞれバス・トイレつき)を貸していた。チェックアウトの朝、「とても重要なので、(滞在後の)評価レビューを必ず書くように」と念を押された。

キューバには地元住民が活用する、既存の相乗りのしくみも存在するようだ。観光客が利用するタクシーは、約10分の距離で10ドルほどかかり、値段交渉などの煩雑さも伴うので、いずれウーバーのようなライドシェアも展開されることだろう。

筆者がこれまで見てきたアフリカ大陸の文脈とはまた異なる、技術などの段階を飛び越えたリープフロッグ(蛙飛び)的発展がキューバで起こるのも、時間の問題かもしれない。

文・文中写真=MAKI NAKATA

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