他の産業同様、人間がこなしてきたタスクを自動化もしくは代替させるというベーシックな使い方は、日々、関係者の中で議論が進んでいるようである。
そんななか、米大手・ブリザード・エンターテイメント(以下、ブリザード)の活用例は特筆すべきかもしれない。最近、ブリザードはオンラインシューティングゲーム「オーバーウォッチ」に新機能を追加。利用者のプレイ環境を改善していくとしている。
オンラインゲーム上では、ゲームを楽しむ一般ユーザーに対して悪口を言ったり、わざとゲームの進行を妨害する悪質ユーザーが一定数存在する。オーバーウォッチの総括デザイナー・Scott Mercer氏によれば、そんな彼らの有害な行動を遮断するため、同ゲーム内にさまざまな機能を導入することにしたという。
例えば、新機能のひとつに「会わない機能」がある。これは、一般的な利用者が以前に遭遇した悪質なユーザーと再び遭遇しないよう、システム的に排除できる機能だ。併せて、申告された悪質ユーザーに対する処罰などの内容を、ユーザーにゲーム内メッセージや電子メールで共有する機能も加えたという。
最近ではまた、マシンラーニングアルゴリズムを活用して、有害な書き込みを続ける利用者を自動的に選別し、アカウントに対する"制裁"を加えられるようにもした。結果、悪口など有害な書き込みでチャット禁止にされたアカウントは、3月比で651%(5月時点)も増加。一時および永久停止アカウントも1471%増加したという。人工知能がいかに効率的に有害な書き込みを排除できるか実証した形だ。
一方、中国企業BIT.GAMEが用意しているサービスも興味深い。同社は、ブロックチェーンベースの新たなゲームプラットフォームを展開するとしているが、そこで人工知能の活用が謳われている。ブロックチェーンとともに、プラットフォーム内の不正や詐欺行為を検出するのが主な用途となる。
というのも、同社は独自のトークンをプラットフォーム内で流通させる計画だが、その保護とセキュリティーのために新しい技術を駆使する構えだ。
オンラインゲームには、コミュニティー要素が取り入れられて久しい。リアル世界と同様とまではいかないが、それに近しい"疑似リアル世界"がそこにある。
上記の例を見る限り、人工知能はより拡張していく疑似リアル世界の正常な運営、デジタル世界におけるユーザー同士のコミュニケーションの円滑化、また将来的には、リアル世界とも互換性があるトークンの保護、すなわち資産管理に積極的に使われていくかもしれない。