しかし、今は違う。アマゾン、楽天、ZOZOタウンなどのECプラットフォームの台頭によって、私たちの消費行動は大きく変わった。店舗に足を運ぶのは商品との偶発的な出会いを求めるためで、欲しいと思うものはECサイトで購入するのが当たり前になっている。
ECサイトの買い物で必要となるのがクレジットカードだ。代引きや後払いも可能だが、基本的にはクレジットカード決済が前提。全員が全員、クレジットカードを保有できればいいが、現実はそう簡単ではない。
例えば、支払い能力の乏しい若年層やフリーランスは与信がないと判断されてしまうため、クレジットカード会社の審査が通りづらい。彼らにとって、ECサイトでの購買活動やサブスクリプションサービスとの契約は意外と不便だったりする。
そんなクレジットカードの代替サービスとして登場したのが、カンムが運営する「バンドルカード」だ。アプリから申請すると数分でスマホにバーチャルカードがインストールされ、VISA加盟店でネット決済が可能。手続きが完了すれば、実物のカードを手にすることもできる。
また、2018年4月にはアプリで金額を指定するだけで入金される新サービス「ポチっと」を開始した。2018年中に150万インストールを目指しているという。
彼らがこの時代にカードとスマホの併用で決済サービスを行う理由とは。そしてこれからの「決済の形」はどのようになるのか。カンムの八巻渉に聞いた。
カンム 八巻渉
「アプリを開く手間」も与えないくらい手軽にしたい
━━金額を指定するだけで入金される「『ポチっと』チャージ」を開始されました。まず、サービスを開始した理由を教えてください。
決済を手軽にしたい。それがサービスを始めた最大の理由です。今から2年前、2016年に“アプリから誰でも1分で作れるVisaカード”をコンセプトにした、チャージ式Visaプリペイドカード「バンドルカード」の提供を始めました。
生年月日と電話番号を入力するだけで、すぐにネット決済専用のバーチャルカードを発行。希望者は実店舗で使えるリアルカードを持つことができたのですが、個人的には課題もあるなと思っていました。
━━課題ですか。
誰もがすぐにリアルカードを持つことはできたのですが、チャージ式のため、カード内にお金をチャージするには、コンビニでチャージしたり、ATMからお金を振り込んだりしなければなりませんでした。
今回、「ポチっと」チャージをリリースしたのは、チャージの手間を改善することが目的です。やっぱり、お風呂上がりの深夜にコンビニまで足を運ぶのは嫌ですから。
━━確かに面倒です。
僕はこれらのサービスを通じて、誰にでも等しく決済手段を提供したいと思っています。例えば、現在は若い世代や与信審査に通りづらい職業の人など、法的な問題でクレジットカードを作れない人がたくさんいます。そうした人が親のクレジットカードを持ち出す、あるいは闇金に手を出してしまうケースも少なくありません。
バンドルカードのメインユーザーは10代ですが、「ポチっと」チャージは20代以上の利用を想定しています。10代にはまず「バンドルカード」を使ってもらい、カードで買い物をすることに慣れ親しんでもらい、20代から「ポチッと」でクレジットカードのような使い方をしてもらう。これがLTV(ライフタイムバリュー)の理想形ですね。