ウーバー・テクノロジーズは今まで長きにわたり、ライドシェア業界の問題児だった。同社は2009年に創業し、サンフランシスコ拠点のスタートアップから、破壊を起こすグローバル大企業へと成長。株式上場はしていないものの、2017年の売上高は75億ドル(約8200億円)に上る。ただし、同年の損益は45億ドル(約4900億円)の赤字だった。
シェアリングエコノミーは本当の意味で、ウーバーが開拓したものだ。運転手は自分の車を「シェア」し、運転することで報酬を得る。こうした既存の秩序の破壊は各分野で行われ始め、「ウーバリゼーション(ウーバー化)」と呼ばれるようになった。
同社の事業モデルはうまく機能したようだ。ウーバーは投資家から220億ドル(約2兆4000億円)を調達し、アルゼンチンからベトナムまで60カ国400都市で事業を展開。乗車回数は10億回に達しており、フルタイム従業員は約1万2000人、運転手は約200万人だ。同社への認識が変わりつつある証拠として、ウォーレン・バフェットは同社に30億ドル(約3300億円)を投資する意向を示している。
一方で、ウーバーが顧客や運転手5700万人分の個人情報流出を1年間隠し続けていたとされるスキャンダルが浮上したことで、同社の傲慢(ごうまん)な文化が浮き彫りとなった。
エリック・ホルダー元司法長官の主導で行われた同社の職場文化を探る内部調査の結果、従業員の不平等な待遇、人事部のずさんな体制、飲酒と侮辱的な物言いが評価される「男子学生」的文化など、47件の大きな問題が見つかっている。同社の共同創業者であるトラビス・カラニック前最高経営責任者(CEO)は2017年、辞任に追い込まれた。
だが昨年夏、カラニックの後任にダラ・コスロシャヒが就任してからは、ウーバーがより優しく親切な会社へと成長した兆しが出ている。同社は直近の四半期で約25億ドル(約2700億円)の利益を出したと発表しており、事業の黒字化さえも期待できる状況だ。
同社を批判する人の多くは、この数字を懐疑的な目で見ている。中には、ロシアと東南アジアで同社が「降伏」したことに言及し、ウーバーは「銀食器を質屋に入れて利益を上げている」と表現する者もいる。
ウーバーは、東南アジアのライドシェア・食品配達事業をシンガポール企業に売却し、続いてロシア事業も同国のネット大手ヤンデックスと統合させることに合意した。この2つの「諦め」により、ウーバーは29億ドル(約3200億円)の収入を得て、それがなければ出ていたはずの4億8000万ドル(約530億円)の赤字を相殺した。