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2018.06.08 10:00

起業して、138億円で売却──僕が再び、スタートアップの現場で働く理由

ジラフ代表取締役 麻生輝明(左)、執行役員 佐々木俊介(右)

スタートアップの創業者にとって、出口戦略は事業戦略と並ぶほど重要なものと言えるかもしれない。IPOを目指すのか、はたまた企業売却で大きな資金調達を果たすのか。いち経営者として、そのまま企業へ残る者、あるいはその資金をもとに新たな事業を起こす連続起業家もいれば、エンジェル投資家として他のスタートアップへ関与する者もいる。TechCrunchなどを飾る「〇〇が〇〇へ数十億円で買収」という類のニュースは、ある種の晴れやかさと羨望をもって受け止められる。

2007年、モバイルサービスの会社して設立され、App StoreやGoogle Play Store売上ランキング上位に入る人気ソーシャルゲームを複数タイトル制作。その後、2012年にグリーへ138億円で売却されたのがポケラボ。その共同創業者として開発の一翼を担っていたのが、佐々木俊介だ。ポケラボ売却後、会社を退職し、投資家としての活動やトレカ専門フリマアプリの開発などに携わってきたが、2017年3月に株式会社ジラフへの出資と、執行役員として経営参画を発表した。

ジラフは代表取締役の麻生輝明が大学在学中の2014年に創業し、買取価格比較サイト「ヒカカク!」やスマホ特化型フリマサイト「スマホのマーケット」などを運営。最近では匿名質問サービス「Peing(ペイング)-質問箱-」を買収したことでも話題になった。

一度は起業家として自社のセルアウトを果たし、大きな資金を手にしながら、改めて別のスタートアップにジョインし、一組織人として働くというのは、どんなモチベーションがあったのだろうか。佐々木は「極めて経済合理的な理由」と振り返る。

「もちろんエンジェル投資家として素晴らしい成果を出している方もいますが、僕の場合、投資だけでは経営者としての『筋力』が落ちてしまうのではという危惧があった。何か共感できる企業に投資するだけではなく、自分も中に入って製品を作ったり、組織運営したりしていくほうが面白いな、と考えていたんです。ポケラボ売却後、自分の会社を立ち上げて新たにアプリを開発してはいましたが、なかなか思うようにスケールできなかった。自分の胆力が足りない部分もあったのかもしれません。これからこの会社をどうしようか、と考えていた矢先、出会ったのが麻生さんだったんです」

麻生と出会ったのは、ビジネスマッチングアプリがきっかけだったという。

「向こうからメッセージをもらって、はじめて会って話したのですが、同世代の中でもダントツに優秀な経営者だと感じました。これほど目的意識の強い人はなかなかいないし、僕と志向性は重なる部分もあるけど、麻生さんのほうが圧倒的にアクティブ。資金調達中だということで、『結構回ったんですよね』とサラッと言いながら、実際100社くらいにアプローチしていたんです」



「また、僕の会社でやっている事業領域とも近く、エンジニアも積極的に登用しているということで、会って2回目くらいで『一緒にやりませんか』と具体的に話を深めて行きました」。佐々木はジラフのチームに、ポケラボを創業した当時の活気のようなものを感じていたという。「共同創業して、まだチームも小さかったけどみんな住み込みで一緒に開発して……。麻生さんをはじめ、経営陣や従業員も若いし、いったん僕の会社は休眠させて、ここでしっかりやりきってやろう、と思いました」
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文=大矢幸世 写真=小田駿一

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