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2018.06.22 07:30

データを共有できない人間の心理と透明化のメリット

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データを戦略的な資産とみなし、その利活用を推進する企業は年々増加している。しかし、組織横断的に統一されたデータを、あらゆる社員が常に共有し、利活用できる状態、つまりデータの透明化を実現できている企業はまだ少ないようだ。

ではなぜ、透明化は進まないのか。その理由はほかでもない、「人」であることをご存知だろうか。

オーストリアの数学者ルドルフ・タシュナーによれば、古代エジプトの指導者は、毎年のナイル川の氾濫予測に、数学を用いていたそうだ。そうとは知らない人びとは神秘的な力で予測したと信じ、指導者を崇め、農耕における種まきから収穫まで、教えを仰いだという。指導者たちは、最後まで数学を利用したことを明かすことはなかった。影響力や権力を失いたくなかったからだ。

この例のように、人はデータを手にすると、次の2つの行動を取り、自分の立場や仕事、優位性を守ろうとしてしまう。

1. データを囲い込む

自分あるいは自部門に依頼しなければデータが手に入らない状況をつくる。データを共有しないことによって、自らの有利な立場や権力、あるいは仕事そのものを守ろうとする。代理店がクライアント企業に対しデータの開示、共有を制限し、自社へ頼らざるを得なくするケースも同様だ。

2. データを加工する

役員やマネージャー、他部門関係者、あるいはクライアント企業に提出されるデータやレポートは、多くの場合、意図を持って加工されている。対象となる人にどのようなデータを見せるべきかを議論し、事前会議を開くのはもはや当たり前。都合の悪い問題を隠蔽する、上司を喜ばせる、個人をよく見せようとする、あるいは、余計な業務が増えないようにすることが目的だ。

このように、データを道具として個人の自己利益が優先された結果、組織全体でデータを民主化することはできず、組織の利益は損なわれる。古代エジプトの例でも、指導者個人たちの利益は守られたが、エジプト文明全体の視点から言えば、各個人が知見を得て農耕に活かせたならば、はるかに大きな収穫があったはずだ。
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文=斉藤 梨沙

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