ネット中毒は薬物中毒と共通点が多い
では飲酒はどうでしょう。そもそも法律では禁じられていますが、10代は若くて回復力があるから飲酒を重ねても悪影響はあまりないと考えている人もいるかと思います。昭和の時代には、大学に入るなり歓迎コンパで酒をしこたま飲まされるなど、無茶なことが横行していました。
たしかに10代は、酒を飲んでも運動機能が失われにくいので、外見上は平気に見えやすい。しかし、10代では、飲酒が度重なると海馬が小さくなり、記憶障害や認知力、集中力などさまざまな問題も生じます。
アルコールだけではありません。10代の脳は、快楽に敏感で、興奮しやすく、しかも傷つきやすい。ドーパミンの放出と反応が激しいため、アルコール、タバコ、その他中毒的なものに、大人よりも引き込まれやすいのです。しかも、その影響は強く、大人になって取り返しがつかないダメージとなります。
タバコはたった1本でニコチン中毒が始まります。最近話題の電子タバコは、煙が出ないからいいと思ったら大間違い。普通のタバコよりニコチンは数倍多いのです。日本で「成人年齢」が18歳となっても、酒やタバコは20歳からのままとされたのは、当然のことです。
「デジタル中毒」もこれらと似ています。インターネット、スマホのやりすぎは、アルコールやドラッグと同様に、ドーパミンの急増をもたらします。脳を調べてみると共通点が多いのです。
ゲームは、適度なら刺激になっていいのですが、とりつかれたようにやると、ニコチン中毒と似たようなことになります。ゲーム中毒者は、前頭葉のつながりが弱く、また、毎日1時間のゲームでADHD(注意欠陥多動性障害)や不注意の症状が出やすくなります。
いま日本では、アメリカンフットボールの悪質タックル問題が話題となっていますが、脆弱な10代の脳には、スポーツでの脳しんとうも消えないダメージを残します。17歳で亡くなった或るアメフト選手の脳は、生前のCT検査ではわからなかったのですが、死後の解剖で、ぞっとするような進行性の脳疾患がある状態だったといいます。
成長を続ける10代は、記憶がしやすく、長く持続する学習の黄金期であり、同時にIQが上がりも下がりもする時期。そこで大事なのは、親や大人たちが、こうした脳に関して学び、知識を持って10代に接することです。「つながり」不足で、興奮しやすい10代の脳は不安定で、時におかしなことをしでかします。そこで怒りを露わにするのではなく、根気よく寄り添うことが大切なのです。
連載 : ドクター本荘の「垣根を超える力」
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