そんな中、少しずつ注目を集めているのが「音波通信」。中でも「soundcode(サウンドコード)」は、日本だけでなくアメリカや中国など世界21カ国で特許を取得している。仕掛けるのは、長年にわたって開発を続けてきたフィールドシステムと、その新たな用途を開拓するサイノスだ。
2017年のスマートスピーカー日本上陸以降、様々な領域で「音声×テクノロジー」領域に注目が集まる昨今。最終回である連載第4回では、音波通信は我々の生活をどのように変えるのかを探る。その可能性を、フィールドシステム取締役の津久間孝成と、サイノス代表取締役の桑山燿に聞いた。(集中連載 第1回、第2回、第3回)
電波が届かない場所でも通信できる
━━soundcodeについて聞かせてください。「音波によるデータ通信」とはどのようなものなのでしょうか。
津久間:私たちはよく、「音のQRコード」と説明しています。18k~20Hzの音に情報を埋め込み、テレビやスマートフォン、店舗など、あらゆる場所に存在する既存のスピーカーから各デバイス内の専用のアプリに送信する仕組みです。埋め込める情報はテキストデータからウェブサイトのURL、仮想通貨の取引情報など多岐に渡ります。
わかりやすいメリットのひとつは、電波が使えない工場などでも使用できること。また、アプリさえあれば送受信できるので、専用のデバイスも不要です。18k~20kHzは既存のスピーカーで再生できますが人間の耳には聞こえない帯域なので、ほかの視聴体験を邪魔することもありません。
桑山:現在はネットが通じない場所でも3m程度の距離でテキストデータを送受信できるアプリ「soundcode」と、音波通信でID番号を送信して、サーバーに接続することで内容を取得できる「soniccode(ソニックコード)」をリリース済み。また企業向けに、各種OSに対応した開発キットを用意しています。
━━どのような領域での活用を考えているのでしょうか。
津久間:まず、決済領域です。現在、中国ではQRコードを使ったスマホ決済の需要が急速に拡大、日本でも仮装通貨のやり取りはQRコードで行われることが多いです。しかし、これには問題もあります。
例えば、アリペイなど中国のスマホ決済サービスでは、店舗に紙などで貼り付けてある「静的QRコード」の利用限度額が設定されました。これは偽のコードに張り替えて不正送金を狙う犯罪が多発しているからです。現在は店舗側が毎回コードを生成する「動的QRコード」によって対応していますが、音波通信で決済用の音波を毎回生成することでもこの問題を解決できるでしょう。