トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と「会おう」と表明してから約2カ月半、両者は周辺国を巻き込み、激しい外交駆け引きを展開したが、結局は、米国が力ずくで北朝鮮の非核化を短期間で実現させるという当初のシナリオは、大きな変更を余儀なくされたようだ。
トランプ、正恩両氏は書簡のやり取りをする「ペンフレンド」のような関係を築き、非核化は「一度の会談で終わらない」(トランプ氏)と、北朝鮮の主張通り「段階的」かつ長期的に取り組んでいく方向となっている。
「短期決戦戦略」は技術的に困難
北朝鮮核問題の解決は、朝鮮戦争(1950~53年)の終結と裏表であり、一見、複雑な方程式のように映る。しかし首脳会談の論点は、とてもシンプルだ。
米国は、北朝鮮が〇〇までに、全ての核物質および核兵器を一括で完全廃棄することを要求。一方の北朝鮮は、段階的に非核化を実施し、ステップごとに体制保障や経済制裁解除など「見返り」が伴うよう求めている。「〇〇」と記した部分には、具体的な日時が入る。
トランプ政権の狙いは、「X月」や「今年中」、「来年前半」といった日程を北朝鮮に約束させ、短期間のうちに北朝鮮の非核化を不可逆的(後戻りできない)な状態にすることにある。一連の経済制裁も、完全な非核化が確認されるまで解除されない。
ただし、この「all in one(すべて一体)」と呼ばれるトランプ氏の「短期決戦戦略」は、技術的に困難であることが判明している。米スタンフォード大学の核の権威、ヘッカー教授らの報告書によると、北朝鮮の非核化作業が「段階的」になるのは避けられず、最長で15年を要する。
核査察の専門家で米シンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)のオルブライト所長も「年単位」の作業時間が必要と指摘。北朝鮮が主張する段階的な非核化は、実のところ、理にかなっているのだ。