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2018.06.05

入庁31年、女性の味方の「女性課長」が目指す先

Daisuke Morita / shutterstock.com


「当時は、セクハラ発言やセクハラ行為を受け流すのも仕事のうち」という風潮があったと村川は振り返る。彼女はセクハラの対策担当となり、要綱を定め、体制を整えた。実は彼女自身も過去にセクハラに近い体験をしている。立場ある人物に過度なスキンシップを図られ、そのときは怖くて声を出すことすらできなかったという。

当時、セクハラの講習会を開いても、「こんなことガチガチ言わなくてもいい。コミュニケーションのひとつだ」というような無頓着な声も聞こえて来た。一朝一夕で理解が進むわけではなかったが、風土が変わるようにと、持ち前の粘りで改善に努めた。

現在、一般化されている「セクハラはダメだ」という認識は、村川のような勇気ある女性たちがそれぞれのコミュニティで努力を重ねた結果なのだろう。

女性の声を届けるのは女性管理職の役目

村川は、市民の半分は女性という認識から、彼女たちの声をきちんと届けるため、役所には女性の意見を代弁できる女性管理職が必要だと考えていた。しかし、男女雇用均等法施行以前はあきらかに女性職員の採用は少なく、女性にとってロールモデルになりうるような管理職は存在しなかった。

そこで、村川は女性職員に声をかけ、勉強会やワークショップを開催した。現在でも、男女が参加可能な自主勉強会を主宰し、後輩に貴重な経験やノウハウを伝授している。そこには、村川の人間としての温かみがそのまま伝わったような、アットホームな雰囲気があった。

村川は入庁31年目の2016年4月から課長となった。課長としてのプレッシャーを抱えながらも、日々楽しく働くことを心がけている。その姿を見て、後進の女性職員には管理職は楽しいと思ってもらい、それを目指してほしいからだ。


長崎県諫早(いさはや)市役所障害福祉課 課長 村川美詠

自分が完璧でないからこそ、女性職員のロールモデルになりたいと考える村川は、「"会いに行けるアイドル"みたいな感じで、気軽に相談できる先輩になりたい」と言った直後、照れ隠しをするように豪快に「ワハハ」と笑った。役所のなかで慕われている理由が、垣間見えた瞬間がそこにあった。

連載 : 公務員イノベーター列伝
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文=加藤年紀

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