仕事から子育てまで、Amazon echo3台を使い倒すライフハック術


AIは「自分にしかできないことをやる」時間を増やす

──スマートスピーカーの導入によって、生活はどのように変わりましたか?

スマートスピーカーに限らず、AIは「自分がやっていることを代替してくれる」技術。その節約した時間で、自分にしかできないことに取り組めるようになるのが一番の恩恵です。

私は夜、子どもに絵本の読み聞かせをするのですが、私が歯を磨く間はAlexa に読み聞かせをさせます。音読はスマートスピーカーでもできますが、歯磨きは自分でしかできないからです。「自分でなくてもできること」をどんどんAIに任せて、自分はビジネスやランニングといった「自分にしかできないこと」をやる。だから、AIやスマートスピーカーによって生活の質が向上します。


石角氏の自宅には、絵本の隣にAmazon Echoが置いてある。ルンバもAlexaで動かす。

──石角さんは、仕事の時間と余暇の時間を切り分けてバランスを取る「ワークライフバランス」ではなく、両者を切り分けずに限られた時間をいかに有効に使うかを考える「ワークライフインテグレーション(仕事と生活の統合)」を提唱されています。

はい。私のように子育ても事業も全力でやりたい人にとっては、バランスを取るよりも限られた時間をいかに有効に使うかが重要。その点でAlexaはかなり役立ちますね。

例えば、私は時間や明日の天気をスマートスピーカーで確認します。もはや、時間は目で見て確認するものではなく「聞く」もの。たった5秒程度の節約ですが、その5秒で集中力が途切れてしまうことを考えると、実際の効果はそれ以上ですね。

心理学に「フロー」という言葉があります。フローとは、いましていることに完全に没頭し、高い集中力を保っている状態のこと。時計に目線を移してもう一度作業に戻るとフローではなくなってしまうので、大きなマイナスです。

スマホは便利ですが、視覚に頼った多機能集約型のデバイスです。時間を確認しようとしてスマホを開いたら新着ニュースやメッセージの通知などが目に入り、ついそちらに気を取られて無駄な時間を使ってしまう。

一方、視線を移さず声だけで動作が完結するスマートスピーカーではそうしたロスが起きづらいので、余計な情報を入れずに目的を達成できます。集中力向上の面でも、スマートスピーカーは私の生活に不可欠なものです。

スマートスピーカーによって生まれる「親子の絆」

──お子様を、デジタルネイティブならぬ「Alexaネイティブ」にしたいとも発言されていました。

うちには8歳の娘と2歳の息子がいますが、既に2歳の息子もEcho やEcho Spotを使っています。彼にとっては、声で電気を消すのはもう当たり前で。

ある日、息子が「Play jazz!(ジャズ音楽を流して)」と言ったら、おそらくジャズの気分ではなかった娘が「Stop!(音楽を止めて)」と指示。その後はテレビのチャンネル争いのように、2人でEcho Spotをめぐって揉めていたことがありました。旗から見ていて、すごく面白かったですね。スマートスピーカーは、すっかり子どもたちの生活に溶け込んでいるんだなと感じました。

小さい頃からスマートスピーカーを使いこなすことで、かつてのGoogle検索でいわれていたような「目的思考」が身につくのではないかと思っています。いまは検索機能もレコメンドが増えていますが、Google検索でほしい情報を手に入れるためには、何が目的なのかをきちんと理解する必要がありました。スマートスピーカーを思い通りに動かすためにも、同じ要素、つまり目的意識が必要です。

いま日本ではプログラミング教育が必要視されていますが、単なる詰め込み教育をするよりも小さい頃からこうした機械に触れさせて、仕組みを理解するよう仕向けた方が効果的なはず。最近はGoogleが「AIY」というAIスピーカー作成キットを発売しました。私の娘もこれで遊んでいます。ユーザー視点で享受していたものを、エンジニア視点で理解しようとしているんです。

──文字が書けるようになるよりも早くスマートスピーカーを使いこなすというのはとても面白いですね。とはいえ、スマホが普及を始めた頃のように、子どもがスマートスピーカーを使うことに否定的な声も出てきそうです。

Alexaで読み聞かせをしていると聞くと、「もっと母親が子どもと触れ合うべきだ」と非難する人も出てくるかもしれません。けれど、私は子どもと一緒に過ごす時間を大切にした上で、それができない時にスマートスピーカーで代用しているだけ。新しい技術は単純に人が行うことを代替するのではなく、「できないことをやってくれる」ものとして使われるべきだと思っています。

スマートスピーカーの活用は、むしろ親子の絆を深める役割を果たしている気がします。

ある日、自宅のホワイトボードで娘に割り算を教えているときのことです。「10÷2」などの簡単な計算は図に書いて説明できますが、例えば「11÷7」など少し計算式が複雑になると、自分でもすぐには答えが出せないことがありますよね。

その時、私は娘に割り算の概念をきちんと説明した後、Alexaに計算の答えを聞きました。いわば補助的にスマートスピーカーを使ったのですが、いつもとは違った体験を共有できたことで、なんだか親子の絆が深まった気がしました。

我が家では、親子でAlexaの読み聞かせを楽しむことはもはや当たり前。これから日本でもスマートスピーカーの普及が進むはずですが、私はとてもいいことだと思っています。機械が人間同士のふれあいを奪うのではなく、むしろ機械によって新たなふれあいが生まれる可能性があるのですから。

文=野口直希 写真=林 孝典

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