このように様々な分野で注目を集める音声テクノロジーだが、全体的に日本の音声テクノロジーは海外に比べて遅れている。そう話すのは、感情解析を活用したサービスを展開するEmpath CEOの下地貴明氏だ。その原因は、スマートスピーカーの登場時期にあるという。
「2014年にスマートスピーカーの発売を開始したアメリカと2017年発売の日本では、普及に3年分のタイムラグがあります。日本ではまだ音声アシスタントを天気やニュースの確認に使用する程度ですが、海外では音声でのネットショッピングも増えつつあります」
スタートアップを含めた企業動向も日本が先進的だとは言い難いのも、原因はここにあるそうだ。とはいえ下地氏は、現状を悲観していない。
「音声テクノロジーを扱う企業も増えてきていますし、スマートスピーカーも徐々に浸透しつつある。このペースでいけば、世界とのズレが埋まるのはそう遠くないはずです。2020年には音声アシスタントが一般層に広く普及し、さらに5年もすれば生活になくてはならない存在になるのではないでしょうか」
世界におけるスマートスピーカーのいま
David Becker / getty images
では、日本に先行する世界の音声テクノロジーはどのような状態なのか。ここでもやはり、スマートスピーカーの現状を見てみるとわかりやすい。大まかにいえば、スマートスピーカーシェア大手のAmazonをGoogleが追随し、さらに後発としてFacebookやAppleが控えている構造だ。
米Strategy Analyticsの調査によれば、2016年Q4に89.1%を誇っていたアマゾンのスマートスピーカー市場シェアは、2017年には51.3%に低下。代わりにGoogleが35.4%と大きく追い上げ、さらに5月にはGoogleの音声認識AIで操作できる製品数が今年1月の1500点から3000点に増加したと発表。
マネタイズ手段であるECをもっているアマゾンが今後も市場で存在感を示し続けるが、近年はGoogleもリテール業界との提携が噂されている。
Empath CSO(Chief Sustainability Officer)の山崎はずむ氏は世界最大の家電ショー「CES 2018」を見て、Googleの巻き返しを確信したという。
「Googleは、世界観の見せ方が圧倒的に上手でした。コンセプトは、『スマート・ホームからスマート・シティ』へ。会場ではお菓子で作ったような都市の模型で、道案内からショッピング、レジャーまでGoogle Assistantが日常生活をちょっとずつ便利にしてくれることが可視化されていました。音声でのインプットとタッチ操作で利用できるスマートディスプレイの『Android Things』が発表されたのも大きいですね」