5. 時間的スペース
私が関わるイントラプレナーの多くは、新たなアイデアにかけられる時間が限られていることに不満を感じている。これこそ、その場でプロジェクトに一定時間取り組めるイノベーションラボを持つメリットの一つかもしれない。しかし私が今まで働いてきた会社では、クールなイノベーションスペースがあっても全く使われていないことがあった。経営陣は投資と同様、イントラプレナーが新たな商品やサービスの開発に集中できる時間を割り当て、確保しなければならない。
6. 学習スペース
イノベーションを起こすには、新たなスキルを学ぶ必要がある。リソースと時間があっても、それをうまく活用できなければ意味がない。既存企業の大半の人は従来的な働き方に慣れてしまっている。イノベーターとして、さまざまな機能の従業員に新たな働き方(リーンスタートアップやデザイン思考など)を訓練することが必要だ。
7. 失敗するスペース
イノベーションには新たなアイデアを試すことが必要だが、予定通りに行かないこともある。製品アイデアの大半は挫折するものだ。しかし、より多くのものを試すほど、うまく行く可能性が高まる。イノベーションを活性化させるため、経営陣は失敗を受け入れ、大切にしなければならない。新たなアイデアに漸進的に投資して進捗を追い、最も効果があったアイデアにのみ2倍の投資をするようにすれば、経営陣はより楽に失敗を受け入れ、学べるようになる。
8. 展開のスペース
イントラプレナーにとって最悪なのは、素晴らしいビジネスモデルを持つ本当に良い商品を作ったのに、会社が展開を望まないときだ。この成功の問題は、戦略的整合性が取れていない場合や、開発中の新商品が現在成功中の中核製品のシェアを奪ってしまう場合に生じる。この場合は、素晴らしいビジネスモデルを見つけたら重要関係者が展開に投資する、という明確なコミットメント(確約)が必要だ。
ここに挙げた8つのスペースを作ることは、イノベーションが長期的に成功するための重要基盤で、物理的なスペースよりはるかに重要だと私は思う。物理的なラボやイノベーションルームは、こうしたスペースが体現された場となるべきだ。この8つのスペースが社内にあれば、イノベーションラボの設置さえ実は必要ないかもしれない。
とはいえ、このスペースの確保には最終的に経営陣の判断が必要だ。イントラプレナーにとって、関係者管理に取り組む必要性がより一層高まる理由もここにある。経営陣からこうしたスペースを与えられないままイノベーションラボを設置すれば、積極的に「イノベーション劇場」に参加しているも同然だ。そうなれば、あなたに残された道は演技上手になることしかないだろう。